2015.04.10更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

会社を辞めるとき、多くの場合、退職届を会社に提出することとなります。

しかし、退職届を提出した後、何らかの理由で、退職するのをやめたいと考えることもあるかと思います。

このような場合、退職届の提出を、撤回することはできるのでしょうか。

 

まず、退職届の提出が、提出者の真意に基づかない場合、たとえば、会社の上司から脅されて退職届を書いたとか、会社に騙されて書いてしまったなどの場合は、退職届の提出は無効となると考えられます。

この場合、退職届は無効であるから従業員の地位にあると主張し、認められなければ、従業員の地位にあることを確認する裁判を行っていくこととなるでしょう。

 

では、提出者が本心から退職しようとして退職届を出したが、その後の事情の変化等で、退職を撤回したいと考えた場合は、どうなるのでしょうか。

 

退職届の提出は、法律的には、「労働契約の合意解約の申込み」と評価されることが多いと思います。「労働契約を円満に終わりにしたいので、退職に合意してもらえませんか?」と申し込んだ、ということですね。

 

とすれば、会社側が、その申し込みを承諾、すなわち、「分かりました、退職を認めましょう。」との意思表示がなされていなければ、合意解約が成立したといえませんので、退職届を撤回することが可能であると考えられます。

 

もっとも、退職届を提出した後、会社が退職に向けて手続きを進行していれば、合意解約について黙示の合意があったと評価されることも多いのではないかと思いますので、具体的な事情を検討する必要があるでしょう。

 

また、退職届の撤回を認めると、会社に大きな損害を与えるような場合には、退職届の撤回はできないとする判例もあります(このような場合の撤回は、信義に反する、という理由のようです。)。

 

例えば、退職届を出して1か月も後に、やっぱり退職届を撤回する、と言い出しても、会社は従業員の退職を前提に、新たな事業体制を構築している(例えば、新たな従業員を雇用するなど)わけですから、退職届の撤回はなかなか認められるものではないと思います。

 

退職届の撤回ができると思われる場合には、上記の脅迫・欺罔の場合と同様、会社に従業員の地位にあることを主張し、認められなけば、地位確認の裁判を行っていくことになります。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.09更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

11歳の小学生が、校庭のゴール目掛けて蹴ったサッカーボールが校庭から転がり出たため、バイクに乗っていた男性が避けようとして転倒し、のちに死亡した問題で、小学生の親への賠償請求が認められるかが争われた事件の最高裁判決が、本日、下されたようです。

 

幼い子供が他人に損害を与えてしまったときは、原則として、親が代わりに賠償する責任があります。

もっとも、親が子供の監督義務を怠っていなかった場合には、例外的に親は賠償の責任を負わないこととなります。

 

高等裁判所では、本件が、親が監督責任を怠っていなかった場合であるとは認めず、親に対して、多額の損害賠償を命じていました。本日の最高裁判決は、その高等裁判所の判決を覆したものです。

 

判決文を見ると、子供はサッカーボールをゴール目掛けて蹴っていただけであり、校庭の日常的な使用方法に則った行為であること、ゴールにネットが張られ、ネットフェンスなども設置されており、ボールが校外に転がり出ることが通常のことであったとはいえないこと、をそれぞれ認定しています。

 

その上で、子供の行動は、通常は人身に危険が及ぶ行為といえないとして、親の監督義務が果たされていないものとは評価できないとしています。

 

かかる最高裁の判断は、おおむね妥当というべきと考えます。

 

なお、校外にサッカーボールが転がり出てしまったことについて、学校の設備に不備があった可能性も否定できないのではないでしょうか。

とすれば、もう少し、別の争い方もあり得たのではないかとも思います。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.08更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

今日は、弁護士会の法律相談のため、野田市の商工会議所(欅のホール)まで行ってきました。流山市からは、車で30~40分くらいの、微妙に離れた場所にあります。

欅のホールの1階と2階は、図書館になっています。

 

私の実家は野田市ですので、幼少時から、この図書館にはよく来ていました。

 

小学生の頃は、欅のホールでなく、興風会館という場所に図書館がありました。欅のホールは、私が高校生になった頃に新たに建設され、図書館が移設された記憶があります。

 

大学に入ってからも、図書館をたびたび使用し、司法試験の勉強をしていました。その場所で、弁護士として法律相談をすることができたのは、非常に感慨深いものでした。

 

欅のホールから実家まで、車で5分程度ですので、法律相談終了後、実家に顔を出すこともできました。

肥料を100キロほど買うのを手伝わされてしまいましたが。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.07更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

何気なく私の自宅の賃貸借契約書を見ていたら、次のような規定が設けられていました。

 

第8条(禁止又は制限される行為)

賃借人は賃貸人の書面による承諾なく、同居人の数を増員し、あるいは同居人を変更してはならない。

第13条(契約の解除・消滅)

賃貸人は、賃借人が次に掲げる各号のいずれかに該当すると判断した場合、何らの催告を要することなく、即時本契約を解除することができる。

 

結婚などによって、同居人が増える場合は、賃貸人の許可をあらかじめ得ておかなければならず、それを怠れば、賃貸借契約を解除されることもあり得る、という規定です。

 

しかし、結婚や出産によって同居人が増えるときに、事前に賃貸人に許可を取っている人などまずいないはずです。このような場合に、賃貸借契約を解除できてしまうとすると、それはおかしい気もします。

 

このような規定は、果たして有効なのでしょうか。

 

結論としては、上記のような約束が賃貸借契約に記載されていても、よほどの合理的な理由がない限りは、承諾なく同居人が増えても、賃貸借契約を解除することはできない、と考えるべきでしょう。

 

法律的には、「借地借家法」という法律に規定があります。すなわち、借地借家法は、賃貸借契約の解約申し入れ等について、「正当な事由」が必要であると規定していますが、結婚や出産などで同居人が増えた場合には、この「正当な事由」がないものと考えるべきだからです。

(この場合、賃貸借契約に書かれている居住人数制限の規定は、借地借家法に反し、賃借人に不利な規定ですので、無効とされるものと解釈されます。)

 

もっとも、具体的な状況いかんでは、「正当な事由」があると評価される(賃貸借契約が解除されてしまう)場合もあるでしょう。

 

例えば、無限定に何十人も一室に同居してしまうような状況だと、ほかの居住者の迷惑にもなりますし、建物が傷みやすくなったり、共用部分の管理が不十分になってしまったりするなど、問題も多く発生すると思われますので、賃貸借契約を解除してもやむを得ないと判断されてしまう場合もあろうかと思います。

 

最終的には、同居人の人間関係(親族関係)や同居の理由、同居によって生じた住環境の悪化等、具体的な事実を踏まえて、「正当な事由」を判断していくことになるかと思います。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.06更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

先日、造園業を営んでいる方から、木の話を伺いました。樹木の中では、松の木が一番高価なのだそうです。

モノにもよるのでしょうが、高いものだと数百万円の値段がつくものもあるという、びっくりするようなお話も伺いました。

 

さて、今回は、このような樹木に関わる問題についてお話ししたいと思います。

お金を借りるとき、持っている土地に抵当権をつけることがあります。

抵当権をつけておけば、お金を返してもらえなくなったときに、その土地を売却し、売却代金で借金の返済を受けることができます。

 

では、その土地上に、樹木が植えられていた場合、その樹木も土地と一緒に売却することができるのでしょうか。これは、抵当権が土地上の樹木に及ぶか、という問題です。

 

この問題について、裁判所は、基本的に土地上の樹木にも、抵当権の効力が及ぶ、と判断しています。すなわち、土地上の樹木も一緒に売却し、その売却代金から返済を受けることができるのです。

(例外的に、抵当権の効力が及ばないときもあります。例えば、抵当権をつけるときに、樹木には抵当権の効力が及ばないと約束していた場合などです。当たり前ですよね。)

 

しかし、土地の所有者が勝手に樹木を伐採したり掘り起こしたりして、売却しようとすることもあります。特に、その樹木の値段が高価で、高く売却できそうなときには、このようなトラブルも起こり得ます。

 

樹木の伐採や搬出が行われそうなときは、それらを禁止する仮処分を裁判所に申し立てて、伐採や搬出を防がなければなりません。また、これらの申立てが間に合わなかったときは、損害賠償の請求を行うなどして、損害を填補することも考えられます。

 

もっとも、損害賠償を請求するときは、損害がいくらであるのかを立証しなければなりません。そのため、樹木がどの程度の価値であるのか、鑑定などをして決めなければならず、手間とお金がかかってしまう可能性が高いものと思われます。

 

土地の価格だけで借金を返してもらえるのであれば、あえて樹木についてまで請求を行う必要もないかもしれません。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.05更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

交通事故に遭ったとき、怪我の状況によっては、仕事を休まなければならなくなってしまうことがあります。このようなときは、その休業期間分の得られるはずだった収入について、「休業損害」として損害賠償請求できることがあります。

 

怪我の治療の必要がある場合は、怪我が治って職場に復帰するまで、後遺障害が残ってしまった場合は、症状固定時(これ以上、障害がよくならないと診断されたとき、とお考えください。)まで、死亡してしまったときは、死亡時まで、それぞれ休業損害として賠償を受けることができます。

(なお、症状固定時以降や、死亡時以降については、「逸失利益」という項目で、損害賠償の請求をすることができます。)

 

休業損害として賠償される額は、1日当たりの収入に休業日数を乗じて計算されます。例えば、一日1万円稼ぐ人の場合、10日休業したら、1万円×10日で10万円の休業損害が賠償されることとなります。

 

しかし、この「一日当たりの収入」をどのように考えるか、非常に難しい問題があります。

会社員や公務員の方のように、月当たりの給与額があまり変動しない方であれば、比較的容易に算定することができるのですが、例えば、自営業者のように、月によって売り上げが大きく変動する人の場合は、どの月を基準にして考えるかで、休業損害額に大きな差が出てしまうからです。

 

基本的には、前年度の確定申告書などから年収を証明し、それを基礎にして一日当たりの収入を計算することが多いです。

もっとも、自営業者の方の中には、経費を多く算入し、年収を少なくしている方もおりますので、確定申告書を基にすると、休業損害額が少なすぎてしまうこともあり、非常に悩ましいところです。

 

また、火事従事者(例えば「主婦」)の方が交通事故に遭ったときに、「一日当たりの収入」をどう考えるかも、よく、問題となります。

 

この場合は、「賃金センサス」と呼ばれる表を使って、休業損害額を算定する、というのが、裁判所の考え方でしょう。

賃金センサスとは、統計資料で、性別、年齢別の平均賃金などが記載されている表のことです。この表をもとにして、収入額を算定することによって、適切な休業損害額を計算することができるのです。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.04更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

先日、借用書なしでお金を貸してしまったときのことについてお話ししました。今回は、お金を貸した相手が死んでしまったときのことについてお話ししたと思います。

 

お金を貸していた相手が死んでしまったとき、誰に貸したお金を返すよう請求すればよいのでしょうか。

 

まず、貸した相手に相続人がいるときは、その相続人に対して、貸したお金を返すように請求することができます。

民法上、相続人は、相続開始のときから、亡くなった人の財産に属した権利義務の一切を受け継ぐこととされています。そのため、借金も、相続人が受け継ぐこととなるからです。

 

なお、相続人が複数いるときは、相続分に応じた請求ができることとなります。

例えば、相続人が子供3名のときは、借金の3分の1の額ずつ請求することができることとなります。

 

では、相続人がいない場合はどうなるでしょうか。

亡くなった人が天涯孤独であったり、相続人が全員、相続放棄をしてしまったりした場合などが、この場合にあたります。

 

このような場合は、相続人に対して、貸したお金を返すように請求することはできません。

 

亡くなった人にそれなりの財産がある場合は、裁判所に申し立てて相続財産管理人という役目の人を選んでもらい、その人に貸したお金を返すように求めることも考えられますが、相続財産管理人を選ぶ申立てをするには、費用や手間もかかります。

 

結局は、費用対効果を考えて、相続財産管理人の選任の申立てを行うか、回収をあきらめるか、のいずれかの決断をしなければならなくなると思います。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.02更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

お金を貸したときに、借用書を作成しないことがあります。特に、親族や友人にお金を貸すときには、心情的に借用書を取りづらいことから、借用書が作成されない傾向にあるように感じます。

 

もちろん、借用書を作成していなくても、お金を貸したという事実には間違いがありませんので、きちんと返してもらえるのであれば問題はありません。

 

しかし、借用書がないことによって、紛争が生じてしまうこともあります。例えば、借主が「お金は借りていない。」とか、「借りたことはあるが、そんなに多額ではない。」などと言い張ることも考えられます。

 

そこまで露骨でないにしても、数年前の貸付について、忘れたと主張されることもあるでしょう。借主が死んでしまい、いきさつが分からなくなってしまうことだって、あり得ることです。

 

このようなとき、貸主側としては、お金を返してもらえず、困ったこととなってしまいます。

 

話し合いで解決できない場合は、訴訟によってお金を返してもらうしかありません。

しかし、裁判では、「確かにお金を貸した。」という事実を貸主側が証明しなければならないため(「立証責任」といいます。)、借用書がない場合は、裁判で勝てるかも覚束ない状況になってしまいます。

 

どんなに親しい間柄であっても、借用書を作成することは重要なことといえます。借用書を作っておけば、後日の紛争も防ぐことができますので、人間関係を良好に維持していくためにも、借用書が役に立つのではないでしょうか。

 

さて、すでに借用書を作らずにお金を貸してしまっている方もいらっしゃると思います。

 

そのような場合は、借用書の代わりとなり得る証拠を作っていくことが重要であると思います。

 

例えば、借主に話をして、借入があることを認める「確認書」を作ってもらったり、「借用書」を作成しなおしたりすることが考えられます。

それが難しい場合には、借主に借入があることを口頭で認めさせ、それを録音しておく、などの方法もあるでしょう。

投稿者: 流山法律事務所

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