流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。
何気なく私の自宅の賃貸借契約書を見ていたら、次のような規定が設けられていました。
第8条(禁止又は制限される行為)
賃借人は賃貸人の書面による承諾なく、同居人の数を増員し、あるいは同居人を変更してはならない。
第13条(契約の解除・消滅)
賃貸人は、賃借人が次に掲げる各号のいずれかに該当すると判断した場合、何らの催告を要することなく、即時本契約を解除することができる。
結婚などによって、同居人が増える場合は、賃貸人の許可をあらかじめ得ておかなければならず、それを怠れば、賃貸借契約を解除されることもあり得る、という規定です。
しかし、結婚や出産によって同居人が増えるときに、事前に賃貸人に許可を取っている人などまずいないはずです。このような場合に、賃貸借契約を解除できてしまうとすると、それはおかしい気もします。
このような規定は、果たして有効なのでしょうか。
結論としては、上記のような約束が賃貸借契約に記載されていても、よほどの合理的な理由がない限りは、承諾なく同居人が増えても、賃貸借契約を解除することはできない、と考えるべきでしょう。
法律的には、「借地借家法」という法律に規定があります。すなわち、借地借家法は、賃貸借契約の解約申し入れ等について、「正当な事由」が必要であると規定していますが、結婚や出産などで同居人が増えた場合には、この「正当な事由」がないものと考えるべきだからです。
(この場合、賃貸借契約に書かれている居住人数制限の規定は、借地借家法に反し、賃借人に不利な規定ですので、無効とされるものと解釈されます。)
もっとも、具体的な状況いかんでは、「正当な事由」があると評価される(賃貸借契約が解除されてしまう)場合もあるでしょう。
例えば、無限定に何十人も一室に同居してしまうような状況だと、ほかの居住者の迷惑にもなりますし、建物が傷みやすくなったり、共用部分の管理が不十分になってしまったりするなど、問題も多く発生すると思われますので、賃貸借契約を解除してもやむを得ないと判断されてしまう場合もあろうかと思います。
最終的には、同居人の人間関係(親族関係)や同居の理由、同居によって生じた住環境の悪化等、具体的な事実を踏まえて、「正当な事由」を判断していくことになるかと思います。