2015.03.22更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

刑法(犯罪の成立要件や罰則を定めた法律)を見ていると、「罰金」という言葉が時々出てきます。

 

例えば、公務執行妨害罪や証拠隠滅罪、傷害罪、窃盗罪などには、「罰金」についての規定があります。マイナーなところですと、封印破棄罪、変死者密葬罪、ガス漏出等罪、礼拝所不敬罪などにも、「罰金」の規定があります。

 

罰金とは、一定の額の金銭を、国に奪われる刑罰のことをいい、刑法にその詳細が規定されています。

罰金の最低額は、原則として1万円です。上限は、それぞれの犯罪の条文に規定されている額となります(例えば、窃盗罪は、上限が50万円となっています。)

 

なお、1000円以上1万円未満の金銭を剥奪される「科料」という制裁とは異なる制裁ですので(複雑ですね)、注意が必要です。

 

罰金を命じられたのに、それを納付しない場合は、「労役場」という施設に収容され、罰金を働くことによって納めることとなります。

 

刑法には、「罰金…の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金…を完納することができない場合における留置の期間を定めて言渡さなければならない。」との規定があります。

そのため、実務上、罰金の言渡しをするときには、例えば「罰金5000円を1日と換算した期間、労役場に留置する」等の内容の言渡しも同時に行われます。

 

窃盗で罰金50万円に処せられた場合、仮に罰金5000円を1日と換算する言渡しがなされたとすれば、罰金を支払わない場合、100日間、労役場で留置されることがあり得るわけです。

 

もっとも、労役場に無制限に入れられることはありません。

労役場に入れられるのは、原則として、最長2年とされており、その期間に合わせる形で、1日当たりの罰金の換算額を裁判官が定めているようです。

そうでないと、高額な罰金の場合、行為者に大きな不利益が生じてしまうからだと思います。

 

例えば、金融商品取引法には、7億円以下の罰金という規定がありますが、仮にそれを1日当たり5000円で換算すれば、実に383年以上も労役場に留置されることとなってしまうこととなり、余りにおかしい状況になってしまうのです。

 

せっかく罰金になっても、労役場に何か月も入れられてしまっては、元も子もありません。罰金は、なるべく納めた方がよいのではないでしょうか(あえて、刑法32条規定の罰金の時効の話はしないことにします。)。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.21更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

先日、弁護士会松戸支部で、多重債務処理に関する研修会を受講しました。

やはり、債務整理に関する弁護士の関心は高く、松戸だけでなく柏、流山等、松戸管内の弁護士が多数参加していました。

 

これまでの知識を再確認するような内容がほとんどではありましたが、生活再建の方法として、行政の給付金(たとえば、住宅支援給付金や求職者支援制度など)の概要や受給要件等を改めて確認することができました。今後の債務整理に生かしていければと思っています。

 

また、千葉における自己破産・個人再生の実務・現状についても、ある程度把握することができました。

 

私は、群馬県から松戸支部に弁護士登録を変更したばかりですので、松戸の運用にまだ疎いところがあります。積極的にこのような研修に参加し、研鑽を深めていこうと考えているところです。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.20更新

流山法律事務所の弁護士(弁護士会松戸支部所属)の川越伸裕です。

 

3月も半ばを過ぎました。4月になれば、進学などで新たな生活を送ることになる方も多いと思います。また、四月から新社会人となられる方も多いのではないでしょうか。

 

さて、今回は、会社に採用される際の経歴詐称の問題についてお話ししたいと思います。

 

普通、会社の採用に応募するときには、履歴書を提出すると思います。履歴書には、氏名や年齢、住所などを書くほか、「職歴」や「賞罰歴」を記載する欄があることが多いでしょう。

その欄に、虚偽の内容を書いてしまうことを、経歴詐称といいます。

 

具体的には、大卒以上が応募資格であるため、実際は高卒であるのに大卒と偽って履歴書を記載したり、資格が必要な職業であるため、実際は資格を持っていないのに有資格者であると偽ったり、懲戒免職処分を受けたことがあるのにそれを隠したりすることなどが、「経歴詐称」に当たります。

意外と、この経歴詐称の問題はあるものなのです(実際に、私は、高卒であるのに慶応大学卒業と偽って就職が内定してしまった人の相談を受けたことがあります。)。

 

このような経歴詐称が良くないことであることは争いがないと思います。では、経歴詐称をしてしまったとき、会社側から何らかの懲戒処分を受けてしまうものなのでしょうか。

 

これを考えるにあたっては、会社が応募者の経歴を確認する意義について考える必要があります。

会社は、雇用しようとする人が、任せようとする仕事に相応しい人間であるかを判断する必要があります(例えば、経理担当者を雇いたいと考えたときに、前の会社で横領をして懲戒解雇された人を雇いたいとは思いませんよね。)。そのため、経歴の確認は、採否の判断に当たって、重要な意義を持ちえます。

 

また、経歴に応じた労働条件の決定(経験者であれば、賃金を上乗せするとか、役職に就けるなどの配慮がなされることがあります。)など、会社の秩序決定・維持をするために、正しい経歴を把握することは必要不可欠であるといえます。

 

このような経歴の重要性を考えれば、経歴詐称をしてしまったときは、何らかの懲戒処分が下されてしまうのは、ある意味、やむを得ないところがあるのかも知れません。

 

もっとも、多くの場合、経歴詐称については懲戒免職処分がなされてしまう印象があります。

しかし、経歴詐称の内容が、採否に関わりがない場合、例えば、学歴不問の会社の履歴書に違う学歴を書いたような場合には、必ずしも懲戒免職処分が妥当であるとはいえない場合もあるでしょう。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.19更新

流山法律事務所の弁護士(弁護士会松戸支部所属)の川越伸裕です。

 

例えば、親が死亡し、相続が発生したとき、相続人(子ども達など)が集まって、遺産分割の話し合いをすることがあります。

話し合いをして、みんなが納得する解決ができればよいのですが、時として折り合いが付かず、いつまで経っても遺産の分割ができないこともしばしばあります。

 

このようなとき、遺産の分割について、家庭裁判所に調停(又は審判)を申し立てることによって、第三者である裁判所を間に入れて、話し合いをすることができます。

 

この手続は、相続人である者であれば、誰でも、申し立てることが可能です。もし、相続人が3名いたときは、ほかの2名を相手方として調停を申し立てればよいこととなります。

具体的には、調停の申立書を作成し、遺産の目録(分割すべき遺産を一覧表にしたもの)や亡くなった親や相続人らの戸籍などを添えて、家庭裁判所に申立を行うこととなります。

 

調停手続では、主に調停委員と呼ばれる2名の人と一緒に、話し合いによって、遺産の分割方法を決めていくこととなります。実際は、調停が成立し、問題解決に至ることが多いです。

 

もし、話し合いが付かず、調停が成立しなかった場合は、審判手続に移行し(改めて審判の申立をする必要はありません。)、裁判官が証拠などを取り調べて、妥当な遺産分割方法を命じることになります。実際には、法定相続分どおり(またはそれに近い額)によって、遺産分割を命じることがほとんどであるように思います。

 

遺産の問題は、当事者の利害が絡み合い、問題が大きく、複雑になってしまいがちです。また、遺産がいくらであるか、調査をするのも個人では難しいところがあります。

遺産分割でお困りのことがありましたら、流山法律事務所までご相談ください。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.18更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

いわゆる「ご近所トラブル」で、ときどき相談されるのが、隣の家との境界の問題です。特に、境界を示す「境界杭」などが勝手に動かされ、自分の土地にはみ出してきてしまっている、という相談は、何回か受けたことがあります。

 

私の経験では、相手が1メートルほどはみ出して来て、コンクリート製の壁を作ってしまったという実例を見たことがあります。

 

このような場合、はみ出されてしまった側(被害者側)は、相手に対して、土地を返すように請求することができますし、その土地上に塀や建物を建てられてしまったときは、それを撤去するように請求することもできます。

 

また、動かされてしまった境界杭を適正な場所に戻すこともできます。もっとも、勝手に境界杭を戻すことはできず、隣の家に適正な境界杭を打ち直すことについて協力(立ち会いや費用負担などでしょう)を求めた上で行う必要があります。場合によっては、きちんと測量を行い、境界杭を打つべき正確な場所を特定する必要もあるかも知れません(測量費用が結構かかってしまうと思いますが。)。

 

なお、境界杭を動かすなどして、土地の境界かどこか、分からないようにしてしまった人については、刑事上の罪を問われる可能性もあります。

 

どのようなトラブルがあっても、勝手に境界杭を動かすことはしてはならない(被害者側であっても)こと、境界杭が動かされ、土地にはみ出してこられたときは、隣家と協議すること、整わないときは、裁判所に訴えを起こして解決すること(自力で元に戻そうとしないこと)が重要です。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.17更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

大阪地方検察庁が、裁判中の被告人が居住している拘置所を捜索し、弁護人宛の手紙などを差し押さえた問題で、昨日、大阪地方裁判所は、捜索の必要性を欠くと判断し、110万円の支払いを国に命じました。

この判決は、検察側の行き過ぎた捜索差押を厳しく非難するものであり、結論として妥当であると思います。

 

被告人と弁護人との間のやり取りについては、その秘密が保証されています[秘密交通権]。これは、捕まっている人にとっては、弁護人の助言や援助が重要であるため、その助言・援助を受ける機会を実質的に確保する必要があるからです。

 

弁護人への手紙を差し押さえるということは、明らかに被告人と弁護人とのやり取りを明らかにするものであり、秘密交通権の侵害となるのは当然であるといえます。

 

本件事件の被告人は、強盗事件で逮捕されていたようですが、その被告人の犯罪を証明するために、拘置所内を捜索差押する必要性がそもそもあったのかさえ、疑問に思います。

 

報道によれば、共犯者との間の口裏合わせの可能性を捜査するためであったようですが、とすれば、なぜ弁護人宛の手紙を差し押さえる必要があったのでしょうか(弁護人が証拠隠滅を図ると疑っていたということなのでしょうか?)。

 

この判決は、捜索差押令状を発した裁判官については、違法でなかったとしているようですが、拘置所内を捜索されれば、弁護人とのやり取りが明らかになってしまうおそれが大きいことは明らかです。

 

そもそも、捜索差押を許可した裁判官にも問題があるというべきです。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.16更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

私は、大学生のときから15年ほど一人暮らしをしていますが、その間に7~8回も引っ越しをしました。しばらく同じ所に住んでいると、その家に飽きてしまい、引っ越しをしたくなってくるのです。

 

ところで、新居を借りる際、普通は「賃貸借契約書」という契約を大家さんと取り交わします。その契約書に、ときどき、「家賃の支払を1回でも遅延したときは、催告なく賃貸借契約を解除できる」などという内容の規定がなされていることがあります(賃貸借契約書をお持ちの方は、一読なさってみてはいかがでしょうか。)。

 

これを文字どおり読むと、賃借人からすれば、例え1日でも賃料の支払が遅れれば、家から追い出されてしまうことになりますので、非常に不利な内容の規定ということになります。

 

このような、賃借人に非常に不利な内容の規定は、果たして有効なのでしょうか。

 

ここで、家の賃貸借契約とは、どのような契約なのか、考えてみる必要があります。賃貸借契約とは、大家さんが家を賃借人に使用させ、賃借人はその対価として賃料(家賃)を支払う契約です。そして、通常、賃貸借契約は決められた期間(例えば2年間)続く契約(継続的契約、といいます。)です。

 

そして、このような継続的契約は、「当事者間の信頼関係」に基づいて締結されるものといえます(信頼できないのであれば、何年間も継続して契約しようとは思いませんよね。)。

 

継続的契約である賃貸借契約は、このような特色を持っていますので、賃貸借契約の内容は、かかる特色を反映した解釈がなされる必要があります。

 

具体的には、「大家さんが催告しなくても不合理と認められないくらい、当事者間の信頼関係が破壊されたといえるとき」に限り、賃貸借契約の無催告解除が認められると解釈されるべきなのです。

 

したがって、賃貸借契約書に、どのような文言が記載されていようと、1日だけ賃料の支払が遅れたからといって、そのことを理由として賃貸借契約を解除することはできないと思われます。

もっとも、大家さんが「賃貸借契約を解除したから、賃料は受け取らない。」などと言ってきても、払わないままでいてはいけません。大家さんが受け取らない場合は、供託をするなどの対応が必要不可欠です。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.14更新

流山法律事務所の弁護士(弁護士会松戸支部所属)の川越伸裕です。

 

労働問題で相談にいらっしゃる方に、どのような労働条件(賃金や労働時間などについて)で勤務しているかお聞きすると、時折、「労働条件は全然分からない。」「教えてくれない。」などと言われる方がおります。

 

賃金や労働時間といった、労働契約の根本について、会社がきちんと開示しないということは、非常に問題があると思います。

とくに、労働者は会社に対して弱い立場にあるのが普通ですから、会社としては、きちんと労働条件を明示した上で、採用等を行うべきであるといえます。

 

法律も、労働基準法で、雇用の際の労働条件明示義務を定めています。特に、需要な部分(労働契約の期間や始業・終業時間、休憩時間、休日、賃金、退職など)については、書面にて明示する必要があります(労働基準法施行規則)。

 

また、労働契約法には、「労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。」との規定がありますので、雇用の際に限らず、会社は労働者からの求めがあれば、その雇用条件を明らかにすべきであるといえます。

 

労働条件を知りたい場合は、会社に対して、労働条件の明示義務があることを述べ、労働条件を開示するよう、はっきりと求めることが必要です。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.13更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

昨日、千葉県弁護士会まで出向き、労働弁護団の勉強会に参加してきました。

 

残業代計算に関する知識、特に、残業代を計算する基礎である「実労働時間」の認定、評価、判断に関して、知見を深めることができました。

 

例えば、タイムカードがあれば、残業時間はかなり正確に分かりますが、残業代を支払わないような会社に限って、タイムカードなどで適切な労務管理をしていないことが多いと思います。

 

しかし、タイムカードがなかったからといって、労働時間の証明ができなくなるわけではありません。勉強会では、具体的な判例をもとに、どのように立証活動を行っていくべきであるか、学ぶことができました。

 

勉強会終了後、懇親会があり、参加したのですが、遅くまで参加し過ぎて、船橋駅発の終電を逃すという失敗をしてしまいました。

 

船橋駅から六実駅まで、十数キロの道を2時間ほどかけて歩きましたが、そこで力尽きました(柏までは行けると思ったのですが。)。午後3時前頃の六実駅近くは、タクシーもほとんど通っておらず、たまに通ったタクシーは、「東京に戻る。」という理由で乗車を断られ…。

 

始発の電車の出る午前5時10分まで、六実駅近くの「六実第二公園」で夜を明かすという、馬鹿体験を余儀なくされてしまいました。

 

大反省です。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.11更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

先日、特別養子縁組制度について、概略をお話ししました。

ほかの家の子をもらってきて、実子として届けることは、公正証書原本不実記載罪に該当してしまうこと、そのため、特別養子縁組制度という制度が創設されたこと、などをお話ししたかと思います。

 

今回は、実際に「ほかの家の子をもらってきて実子として届け出てしまった場合」はどうなるか、についてお話ししたいと思います。

 

このような場合、親と子との間には、「戸籍上は」親子関係が成立していますが、実態としては親子ではありません。ですので、例えば20年後、親子の折り合いが悪くなってしまい、親子の縁を切ろうと考えたときは、親子関係不存在確認の調停・訴訟を申し立てる方法により、親子関係が存在しないことを裁判所に認めてもらうことができます(このような裁判が確定すれば、戸籍も訂正されることになるでしょう。)。

 

ほかの家の子をもらってきて、何十年も実子として育ててきたにもかかわらず、いつでも親子関係の不存在を確認することができるという結論は、ある意味、身勝手ですし、子どもに対して酷となることもあると思いますが、実際の親子関係がない以上、基本的には、子ども側に厳しい判断となってしまうようです。

 

この結論に対し、子ども側としては、「親子関係が不存在であるとしても、せめて養子としての立場は認められないのか。」と反論することが考えられます。

しかし、この主張に対しても、裁判所は「養子としても認められない。」との判断を下しているようです。

 

もっとも、余りに子ども側に不利な場合、つまりは「実の親子と同様の生活の実体があった期間の長さ、判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより子及びその関係者の受ける精神的苦痛、経済的不利益、親が実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び請求をする動機、目的、実親子関係が存在しないことが確定されないとした場合に子以外に著しい不利益を受ける者の有無等の諸般の事情を考慮し、実親子関係の不存在を確定することが著しく不当な結果をもたらすものといえるとき」には、「親子関係不存在確認請求は権利の濫用に当たり許されないものというべきである。」との判決も下されており、権利の濫用として、親子関係の不存在が認められない余地もあるようです。

 

子どもの立場・権利を考えれば、実子として届け出るのがよいのではなく、むしろ、法に則って、特別養子縁組制度などを活用された方がよいのではないでしょうか。

投稿者: 流山法律事務所

top_btn11_sp.png
04-7150-8810 メールでのお問い合わせ
弁護士ブログ よくある質問 解決事例 流山法律事務所 離婚・男女問題相談サイト