2015.04.06更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

先日、造園業を営んでいる方から、木の話を伺いました。樹木の中では、松の木が一番高価なのだそうです。

モノにもよるのでしょうが、高いものだと数百万円の値段がつくものもあるという、びっくりするようなお話も伺いました。

 

さて、今回は、このような樹木に関わる問題についてお話ししたいと思います。

お金を借りるとき、持っている土地に抵当権をつけることがあります。

抵当権をつけておけば、お金を返してもらえなくなったときに、その土地を売却し、売却代金で借金の返済を受けることができます。

 

では、その土地上に、樹木が植えられていた場合、その樹木も土地と一緒に売却することができるのでしょうか。これは、抵当権が土地上の樹木に及ぶか、という問題です。

 

この問題について、裁判所は、基本的に土地上の樹木にも、抵当権の効力が及ぶ、と判断しています。すなわち、土地上の樹木も一緒に売却し、その売却代金から返済を受けることができるのです。

(例外的に、抵当権の効力が及ばないときもあります。例えば、抵当権をつけるときに、樹木には抵当権の効力が及ばないと約束していた場合などです。当たり前ですよね。)

 

しかし、土地の所有者が勝手に樹木を伐採したり掘り起こしたりして、売却しようとすることもあります。特に、その樹木の値段が高価で、高く売却できそうなときには、このようなトラブルも起こり得ます。

 

樹木の伐採や搬出が行われそうなときは、それらを禁止する仮処分を裁判所に申し立てて、伐採や搬出を防がなければなりません。また、これらの申立てが間に合わなかったときは、損害賠償の請求を行うなどして、損害を填補することも考えられます。

 

もっとも、損害賠償を請求するときは、損害がいくらであるのかを立証しなければなりません。そのため、樹木がどの程度の価値であるのか、鑑定などをして決めなければならず、手間とお金がかかってしまう可能性が高いものと思われます。

 

土地の価格だけで借金を返してもらえるのであれば、あえて樹木についてまで請求を行う必要もないかもしれません。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.05更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

交通事故に遭ったとき、怪我の状況によっては、仕事を休まなければならなくなってしまうことがあります。このようなときは、その休業期間分の得られるはずだった収入について、「休業損害」として損害賠償請求できることがあります。

 

怪我の治療の必要がある場合は、怪我が治って職場に復帰するまで、後遺障害が残ってしまった場合は、症状固定時(これ以上、障害がよくならないと診断されたとき、とお考えください。)まで、死亡してしまったときは、死亡時まで、それぞれ休業損害として賠償を受けることができます。

(なお、症状固定時以降や、死亡時以降については、「逸失利益」という項目で、損害賠償の請求をすることができます。)

 

休業損害として賠償される額は、1日当たりの収入に休業日数を乗じて計算されます。例えば、一日1万円稼ぐ人の場合、10日休業したら、1万円×10日で10万円の休業損害が賠償されることとなります。

 

しかし、この「一日当たりの収入」をどのように考えるか、非常に難しい問題があります。

会社員や公務員の方のように、月当たりの給与額があまり変動しない方であれば、比較的容易に算定することができるのですが、例えば、自営業者のように、月によって売り上げが大きく変動する人の場合は、どの月を基準にして考えるかで、休業損害額に大きな差が出てしまうからです。

 

基本的には、前年度の確定申告書などから年収を証明し、それを基礎にして一日当たりの収入を計算することが多いです。

もっとも、自営業者の方の中には、経費を多く算入し、年収を少なくしている方もおりますので、確定申告書を基にすると、休業損害額が少なすぎてしまうこともあり、非常に悩ましいところです。

 

また、火事従事者(例えば「主婦」)の方が交通事故に遭ったときに、「一日当たりの収入」をどう考えるかも、よく、問題となります。

 

この場合は、「賃金センサス」と呼ばれる表を使って、休業損害額を算定する、というのが、裁判所の考え方でしょう。

賃金センサスとは、統計資料で、性別、年齢別の平均賃金などが記載されている表のことです。この表をもとにして、収入額を算定することによって、適切な休業損害額を計算することができるのです。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.04更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

先日、借用書なしでお金を貸してしまったときのことについてお話ししました。今回は、お金を貸した相手が死んでしまったときのことについてお話ししたと思います。

 

お金を貸していた相手が死んでしまったとき、誰に貸したお金を返すよう請求すればよいのでしょうか。

 

まず、貸した相手に相続人がいるときは、その相続人に対して、貸したお金を返すように請求することができます。

民法上、相続人は、相続開始のときから、亡くなった人の財産に属した権利義務の一切を受け継ぐこととされています。そのため、借金も、相続人が受け継ぐこととなるからです。

 

なお、相続人が複数いるときは、相続分に応じた請求ができることとなります。

例えば、相続人が子供3名のときは、借金の3分の1の額ずつ請求することができることとなります。

 

では、相続人がいない場合はどうなるでしょうか。

亡くなった人が天涯孤独であったり、相続人が全員、相続放棄をしてしまったりした場合などが、この場合にあたります。

 

このような場合は、相続人に対して、貸したお金を返すように請求することはできません。

 

亡くなった人にそれなりの財産がある場合は、裁判所に申し立てて相続財産管理人という役目の人を選んでもらい、その人に貸したお金を返すように求めることも考えられますが、相続財産管理人を選ぶ申立てをするには、費用や手間もかかります。

 

結局は、費用対効果を考えて、相続財産管理人の選任の申立てを行うか、回収をあきらめるか、のいずれかの決断をしなければならなくなると思います。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.02更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

お金を貸したときに、借用書を作成しないことがあります。特に、親族や友人にお金を貸すときには、心情的に借用書を取りづらいことから、借用書が作成されない傾向にあるように感じます。

 

もちろん、借用書を作成していなくても、お金を貸したという事実には間違いがありませんので、きちんと返してもらえるのであれば問題はありません。

 

しかし、借用書がないことによって、紛争が生じてしまうこともあります。例えば、借主が「お金は借りていない。」とか、「借りたことはあるが、そんなに多額ではない。」などと言い張ることも考えられます。

 

そこまで露骨でないにしても、数年前の貸付について、忘れたと主張されることもあるでしょう。借主が死んでしまい、いきさつが分からなくなってしまうことだって、あり得ることです。

 

このようなとき、貸主側としては、お金を返してもらえず、困ったこととなってしまいます。

 

話し合いで解決できない場合は、訴訟によってお金を返してもらうしかありません。

しかし、裁判では、「確かにお金を貸した。」という事実を貸主側が証明しなければならないため(「立証責任」といいます。)、借用書がない場合は、裁判で勝てるかも覚束ない状況になってしまいます。

 

どんなに親しい間柄であっても、借用書を作成することは重要なことといえます。借用書を作っておけば、後日の紛争も防ぐことができますので、人間関係を良好に維持していくためにも、借用書が役に立つのではないでしょうか。

 

さて、すでに借用書を作らずにお金を貸してしまっている方もいらっしゃると思います。

 

そのような場合は、借用書の代わりとなり得る証拠を作っていくことが重要であると思います。

 

例えば、借主に話をして、借入があることを認める「確認書」を作ってもらったり、「借用書」を作成しなおしたりすることが考えられます。

それが難しい場合には、借主に借入があることを口頭で認めさせ、それを録音しておく、などの方法もあるでしょう。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.31更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

高価なものを買うとき、一括で支払いができないことがあります。そのようなときに利用されるのが、いわゆる「ローン」です。

例えば、新車を500万円で買うような場合、自動車ローンを組んで、毎月5万円ずつ返済していく、などという形を取るわけです。

 

しかし、ローンの支払いをしている間に、何らかの形でローン物件を売却しなければならないこともあるかと思います。先ほどの車の例でいえば、地方から東京に引っ越して、車を必要としなくなったので売却したい、などという事情が生じる場合もあるのです。

 

それでは、そのような、ローンがまだ残っている商品を売却することは可能なのでしょうか。

 

まず、ローン物件の所有権があなたにあれば、売却をすることは可能でしょう。車の例でいえば、車検証の「所有者の氏名又は名称」欄に、あなたの名前が載っていれば、その車はあなたの所有物ですから、売却することは可能です(ただし、ローンは残ります。)。

 

 

では、ローン物件の所有権があなたにない場合はどうでしょうか。

ローンを組むと、ローンを支払い終わるまで、ローン物件の所有権は売主に留保される(所有権留保、といいます。)ことが多いです。ですので、ローン物件の所有権があなたにないことも十分にあり得るのです。

 

車の例でいえば、車検証の「所有者の氏名又は名称」欄に、自動車販売会社の名前が記載されているような場合は、所有権留保がなされている(所有権があなたにない!)と考えてよいかと思います。

 

このような場合は、ローン物件を売ってしまうと、「他人の物を売却してしまった」こととなってしまいます。他人の物は、原則として売ってはいけないことは当たり前ですよね(売却すると「横領」になってしまうかも知れません。)。

 

しかし、まったく売却できないわけではありません。いくつか売却するための方法はあります。

 

①ローンを全部支払ってしまう方法

ローンを全部払ってしまえば、所有権はあなたのものになりますので、売却するのは自由となります。

 

②売主の許可を得る方法

所有権留保している売主が、売却に同意してくれれば、勝手に人の物を売ったことにはなりませんので、売却しても問題はないでしょう。

例えば、車が600万円で売れるのであれば、代金600万円からローンを返済することを売主に約束して、売却すればよいのです。

また、新しい車を買うときに、売主の許可を得て、残っているローン分も含めた新たなローンを組み直す(残債ローン)方法もあり得ます。

 

③買主の地位を変更する方法

売主の合意の下、買主の地位を売却先に変えてもらう方法があります。

買主であるあなたの地位を移転するということは、売却先(ローン物件を譲り受ける者)が残ったローンを支払い続けることとなります。

あなたは、ローン物件の価格から、残ったローン額を差し引いた額程度を売却先から受け取ることとなります。事実上の売却をしたものと評価できると思います。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.30更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

亡くなった方に多額の借金があった場合、相続放棄という手段を取ることによって、借金の相続を免れることができます。

 

しかし、相続放棄をすれば、借金を免れるだけでなく、亡くなった方の財産(土地建物、車、預金など)を取得することもできなくなってしまいます。

そのため、相続放棄をするときには、プラスの財産とマイナスの財産(借金)とをよく調査し、損をしないように判断すべきである、と、以前、ブログで書かせていただきました。

 

それに関連し、相続放棄をしても、相続人(遺族)が「取得」することができる可能性のある財産があることをご存じでしょうか。それは、「生命保険金」です。

 

生命保険には、通常、生命保険対象者が亡くなったときに生命保険金を受け取る「受取人」が指定されています。

生命保険金は、この受取人の「固有の財産」である(遺産分割すべき相続財産ではない!)と解釈されていますので、相続放棄をしても、受取人はその生命保険金を受け取ることが出来るのです。

 

たとえば、受取人が妻のA子さんと指定されていれば、保険金はA子さんの固有の財産ですから、相続放棄をしても、A子さんは保険金を受け取ることができるのです。

 

では、仮に受取人が「法定相続人」とされていたときはどうなるでしょうか。

このときは、法定相続人が、その相続分に応じて、固有の財産として、保険金を受け取ることが出来ることになります。

 

しかし、受取人が「亡くなった方」本人とされている場合には、保険金は亡くなった方の財産、すなわち遺産となってしまいますので、その場合は、相続放棄をすれば生命保険金を取得することが出来ないと考えられます。

 

生命保険金の特殊性と受取人の指定が重要であることがお分かりいただけたでしょうか。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.28更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

相続が発生したとき、相続権を有する相続人の範囲は、法律上定められています。具体的には、亡くなった方(被相続人)の配偶者、子ども、直系尊属(父母、祖父祖母など)、兄姉弟妹と定められているのです。

ところで、相続について相談を受けていると、上記のような相続権を有する人の範囲に含まれるか、判断に迷う事例がたびたび出てきます。

 

たとえば、被相続人と「養子縁組」をした子どもに、相続権があるか、という問題です。

 

確かに、養子は被相続人と生物学的な親子関係にありません。しかし、法律上、被相続人と親子関係にある者とされていますので、養子は相続人の範囲内にあるということができます。

 

では、被相続人と内縁関係にある方はどうでしょうか。

内縁は、婚姻届を出さない、事実上の婚姻関係ですから、法律上、被相続人と婚姻している配偶者であるとはいうことができません。したがって、相続人の範囲内にあるということはできません(もっとも、被相続人の面倒を見ていたなどの事情があれば、寄与分などの主張が可能であることもあるでしょう。)。

 

では、内縁の妻との間の子どもには、相続権があるのでしょうか。

 

確かに、子どもは被相続人と生物学的な親子関係があることは間違いありませんが、被相続人と母とが婚姻していない以上、法律上の親子関係はないものといわなければなりません。とすれば、内縁の妻との間の子どもには、相続権がないこととなります。

 

もっとも、被相続人が子どもに遺産を与えるとの遺言書などを作成していたり、子どもを養子に取っていたりした場合などには、子どもにも相続権が発生することとなります。

 

また、被相続人が、子どもを認知していた場合には、法律上の親子関係が発生しますので、相続権もまた生じることとなります(認知は、被相続人死亡後も可能ですので、遺言書や養子縁組などの対策が取られていない場合は、所定の期間内に認知の訴えを提起すればよいこととなります。)。

 

認知後の子どもの相続分は、民法上、嫡出子の半分と規定されていますが、昨今、かかる規定は憲法に反するとの最高裁の判断が下されましたので、今後は、嫡出子と同じ割合の相続をすることとなると思われます。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.26更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

昨日、失火責任法についてお話ししました。今日は、これに関連し、「小さい子どもが火事を起こして延焼させたとき」の責任についてお話しします。

 

まず、火を出してしまった、子ども本人に、責任を追及することはできません。子どもは、自分の行為がどのようなものか判断することができないため、責任を負わせることができないからです(例えば、赤ちゃんがライターをいじって遊んでいて、火を出してしまったとしても、赤ちゃんに責任を負わせる訳にはいきませんよね。)。

 

そこで、次に、子どもの親に責任を追及することが考えられます。親には、子どもを監督する義務がありますので(民法714条)、この監督義務に違反したと主張して、親に損害賠償を請求するのです。

 

これに対して、子どもの親は、「子どもの監督について過失がない」ことを主張立証して、損害賠償責任を免れることができます。そして、ここにいう「過失」とは、昨日お話しした失火責任法により、「重大な過失」をいうと解釈されています。

 

つまり、「親が子どもの監督について重大な過失がないこと」を主張立証できれば、子どもの失火について、親も責任を免れることができるのです。

 

例えば、ライターを子どもの手の届かないところに保管していたり、事あるごとに火の危険性について指導していたりしたなどという事情があれば、子どもの監督責任について、重大な過失がないということができるのではないでしょうか。

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.25更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

先日、柏で消防車が出動しているのを見ました。危険な火事現場に行き、消火に当たる消防士の方々には、頭が下がります。

 

さて、故意で火を付けた場合、すなわち放火をした場合、刑事上も民事上も、厳しく責任追及されることはいうまでもありません。

 

では、誤って火を出してしまった場合、すなわち失火の場合は、どのような責任を負うこととなるのでしょうか。

 

まず、刑事上の責任ですが、刑法に「失火罪」の規定があります。しかし、法定刑はきわめて軽く(50万円以下の罰金)、放火のときの厳重な処罰とは雲泥の差があります。

 

では、民事上の責任はどうなるでしょうか。例えば、失火が延焼し、近所の家を焼いてしまったときに、火を出してしまった人は、どのような責任を負うのでしょうか。

 

もちろん、被害を受けた人は、被害全額を損害賠償して欲しいと考えるはずです。しかし、法律(失火責任法、という法律です。)は、失火が単なる過失でなく、重大な過失である場合のみに限って、不法行為責任を認める(損害賠償を認める)と規定しています。

 

これは、木でできている家が多い日本では、一旦、火が出てしまえば、多くの建物に延焼してしまう可能性が高く、損害賠償額がきわめて高額になってしまって、酷であるから、という理由に基づくようです。

 

そして、「重大な過失」があると評価されるためには、よほどの事情が必要です。単に、たばこの火の消し忘れであるとか、たき火を十分に消火しなかったとか、天ぷらを揚げている最中に火が入ったなどの事情だけでは、重大な過失があったとは評価されづらいでしょう。

 

このように、失火の場合は、刑事上も民事上も、責任が相当程度軽減されているのです。

 

(なお、失火責任法で責任が軽減されているのは、いわゆる「不法行為責任」についてのみです。別の責任、例えば「債務不履行責任」については軽減されていません。借家を失火で燃やしてしまった場合などは、債務不履行に基づく損害賠償請求が認められ得ると思います。)

投稿者: 流山法律事務所

2015.03.24更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

交通事故の被害を受け、後遺障害が残ってしまったとき、加害者側からは、治療費などのほか、後遺障害慰謝料を支払ってもらうことができます。

この後遺障害慰謝料の額は、後遺障害の程度(1級から14級までに分類されます。)を基礎として、個々の事情を踏まえて決定されることになります。

 

ところで、後遺障害は、事故の直後に発生するものばかりではありません。場合によっては、事故後、何か月も経ってから後遺障害が出ることもあります。

 

しかし、後遺障害が出るまでに何か月も経っていると、その間に、加害者側と示談(和解)が成立してしまっていることがあります。

 

当然、示談成立時には後遺障害がなかったのですから、後遺障害慰謝料の支払がなされている訳もありません。また、多くの示談書には、「債権債務なし」(これ以上の請求はしない)との記載がなされることがほとんどであり、このままでは、被害者側に非常に不利益になってしまいます。

 

では、示談(和解)成立後の慰謝料請求は、まったく認められないこととなってしまうのでしょうか。

 

この問題を考えるに当たっては、発生した後遺障害による損害を、加害者側と被害者側のどちらに負担させるのが公平であるか、という点を考える必要があります。

 

後遺障害は、加害者の行為によって発生したものであり、本来的には加害者がその損害を負担すべきです。また、示談時に後遺障害が出ていなかったとすれば、後遺障害があることを前提とした示談をしなかったことについて、被害者側には何の落ち度もありません。

 

とすれば、示談後であっても、示談当時予想できなかった後遺障害が発生した場合には、加害者側にその損害の賠償を請求することができると解釈するべきでしょう。

 

最高裁の判例でも、示談後に発生した後遺障害について、示談の対象となった損害とは別の損害として、賠償請求を認めている事例もあります。

 

もっとも、新たに発生した後遺障害であれば、どのようなものでも再度の賠償請求が認められると解釈すべきではないでしょう。

例えば、①示談時に予想できなかった新たな後遺障害であり、②医師などの専門家によって、事故と新たに発生した後遺障害との因果関係が明らかとなっていること、③示談によってすでに支払われた金額が、少額であること(実質的に後遺障害慰謝料を含むものといえない程度の額であること)、などの事情があったときに限って認められるべきものと考えます。

投稿者: 流山法律事務所

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