2015.04.25更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

夫婦の関係が悪くなり、別居をお考えになっている方もいらっしゃると思います。そのときに、一番頭を悩ませるのは、別居後の生活費をどうするか、という問題です。

 

夫婦間には、お互いの生活を助け合う義務がありますので、基本的に、収入の高い側の配偶者から、低い側の配偶者へ、生活費を支払う必要があります。これを、「婚姻費用(こんいんひよう、略して婚費)」といいます。

 

婚姻費用の額は、夫婦双方の年収額、子供の人数や年齢などを基に算出されることとなります。裁判所も、上記を反映した「婚姻費用算定表」という表を基準に、婚姻費用額を算定することが多いです。

 

もっとも、婚姻費用をもらえる権利があるとしても、相手方が婚姻費用を払ってくれないときに、無理矢理お金を持ってくることはできません。このようなときは、家庭裁判所にきちんと申立てをして、婚姻費用の額を定めてもらう必要があります。

 

家庭裁判所に調停を申立てた場合、どんなに早くても、初回の調停が開かれるのは1か月以上先になることがほとんどですから、その間の生活費をどう賄うかを検討しなければなりません。

 

例えば、あらかじめ通帳から1~2か月分の生活費として適当な額を出金・保管しておき、別居後の当面の生活費に充てるという方法などを検討することになるでしょう。

 

夫婦共有の財産の一部を、生活費のために使用したということであれば、上記の手法を用いても問題はないと思います。

もっとも、生活費とは考えられない多額の出金をした場合には、離婚の際に清算を求められることになるかも知れません。また、生活費として使用したことを明らかにするために、必ずレシート等を取っておくことが必要です。

 

もちろん、別居ができた後は、速やかに婚姻費用の調停を申し立てることを忘れてはなりません。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.24更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

西アジアの黒海に面した地方に、「グルジア」という国があります。昨日、政府がこの国の名前を、「ジョージア」に変更したというニュースを見ました。

 

どのような方法で変更したかというと、「在外公館の名称及び位置並びに在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律」という、長い名前の法律を改正する方法で変更したようです。

 

(最近、このような長い法律の名前をよく見ますが、個人的にはどうにか短くして欲しいです。例えば「在外公館の名称等を変更する法律」ではだめなのでしょうか。)

 

この法律は、外国にある大使館の名前や場所、外交官(大使など)の給料が定められています。

その中で、これまで「グルジア」として記載されていた部分を、「ジョージア」に変更したということになります。

 

もちろん、これは、あくまで、大使館の名前などを、これから「ジョージア」にしますよ、という政府の方針を示した法律に過ぎません。この先、グルジアという名前を使ったとしても、別に罰せられることはありません。

 

個人的には、まだ、ジョージアという国名に少し違和感を覚えます。

しかし、日本政府がジョージアと呼ぶことを決めた以上、公式の場でその名称が用いられることとなりますので、いずれ、ジョージアと呼ぶ人が圧倒的多数になるのでしょう。

 

余談になりますが、上記の法律を見ると、アメリカ大使の給与基準額が86万円なのに、例えばイラク98万円、アンゴラ100万円、南スーダン91万円などとなっています。内戦などで危険なところの外交官の給料は、高いということでしょうか。

 

その一方、スイスなど、安定していると思われる国での給与基準額が高かったりします。これはどうしてなんでしょうか。疑問は尽きません。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.22更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

会社は、働いている人に休憩時間を与えなくてはなりません。

具体的には、労働時間が6時間を超えるときは少なくとも45分間、労働時間が8時間を超えるときは少なくとも1時間の休憩を与えなければならないとされています。

 

例えば、流山法律事務所の営業時間は、10時から19時までの9時間ですので、当事務所では、少なくとも1時間の休憩を与える必要があります。

 

この休憩時間とは、「①労働時間の途中に置かれた、②労働者が権利として労働から離れることを保障された時間」であると定義されています。

すなわち、①休憩時間を労働時間のはじめや終わりにくっつけて取らせることはできませんし、②労働者が自由に休憩時間を使うことができなければ、休憩時間ということはできないこととなります。

 

昼休み時間中に労働者が会社に待機し、電話や来客があった時に応対することになっている場合、労働者が自由に休憩時間を使用できているということはできませんので、この時間を休憩時間として計算することはできません。たとえ来客や電話がなかった(実際に仕事をしなかった)としても、待機させている以上、労働時間と考えるべきでしょう。

 

待機させていた従業員には、別途休憩を与える必要がありますし、待機の時間が残業時間に当たるのであれば、残業代を支払う必要があります。

 

もっとも、これらの問題については、「待機せよとの業務命令は出していない。」「労働者が会社で待機していた事実はない。」などと、会社側が否定することがほとんどではないかと思います。

 

休憩時間にも、会社の労働から完全に解放されていた訳でないことは、労働者側で立証する必要がありますので、どのような証拠があるのか、十分に検討するべきでしょう。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.20更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

建物賃貸借契約においては、家から退去するときに、その家を「原状回復」して返還しなければならないと規定されていることが多いと思います。

 

私の自宅の賃貸借契約書でも、「本物件の明渡し時において、賃借人は、賃借人又はその同居人、訪問者の故意過失により本物件及び当該建物に破損、汚損等の損害を与えたときは、賃貸人の承諾の下に賃借人の費用負担で原状回復及び損害賠償しなければならない。」という、原状回復の規定があります。

 

もっとも、この「原状回復」とは、借りた家に入居する前の状態に戻すということではありません。

あくまで、賃借人の故意過失、善管注意義務違反(きちんと管理していなかったこと、とお考えください。)などによって生じた家屋の劣化を回復する義務があるに過ぎないと解釈されています(年が経つごとに生じる経年劣化や通常損耗については、賃貸人がその損失を負担すべきであるとの考えに基づくのでしょう。)。

 

具体的には、冷蔵庫などを設置したときに生じる床の凹み、畳やフローリングの自然変色、軽微な画鋲の穴、建物自体の欠陥によって発生した損害などは、基本的に賃貸人が行うべきものであると考えられます。

 

一方、家をきちんと管理していないで発生したカビ、子供やペットによる床や壁の傷など、適切に管理していれば防げたであろう損害については、基本的に賃借人が負担すべきであるといえます。

 

なお、上記に関しては、賃貸借契約書の中で、別の定めが規定されている場合もありますので、注意が必要です。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.19更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

ある人が、何らかの理由で失踪(行方不明)になり、通常7年間、その生死すら明らかでない場合には、その失踪者が死亡したものとみなし、その法律関係を確定させることができます。これを「失踪宣告」といいます。

 

長期間、生死すら分からない訳ですから、どこかで死亡していることも多いかと思いますが、しかし、その反面、確実な死亡を確認した訳でもありませんので、後日、生存が明らかとなる場合もあります。

 

そのような場合は、家庭裁判所に失踪宣告の取消をしてもらうことができます。これにより、失踪者は、自分の権利を回復することができます。

 

もっとも、失踪者のすべての権利が回復されるわけではありません。失踪宣告を受けてから取り消されるまでの間に、「失踪者の生存を知らない」でなされた行為については、失踪宣告の取消があったとしても、何の影響もありません。

 

例えば、失踪宣告がなされると、失踪者が死亡したとされますので、相続が発生します。

失踪者の土地を相続した人が、「失踪者が生きていることを知らないで」、不動産会社にその土地を売却してしまったとした場合、後に失踪者が戻ってきても、土地を取り返すことはできないということになります。

 

この理屈は、相続や売買などの場合だけでなく、身分関係(家族関係)にも妥当します。

 

失踪宣告がなされると、失踪者は死亡したものとされますので、失踪者の配偶者は、独身となり、再婚することができます。

再婚した後になって、失踪者が帰ってきて、失踪宣告の取消をしたとしても、再婚関係には何の影響も与えませんから、再婚関係が有効(つまり、失踪者との婚姻関係は復活しない)ということになります。

 

もっとも、これは、再婚の当事者双方が、「失踪者が生きていることを知らないで」再婚した場合です。いずれか一方でも、失踪者が生きていることを知っていた場合には、失踪宣告の取消によって、失踪者とのもとの婚姻関係が復活してしまうこととなります(いわゆる「重婚」状態になります。)。

その結果、再婚関係が取り消されかねないものとなるなど、非常に複雑で不安定な立場に立たされてしまうこともありえます。

 

このような複雑な関係にならないためにも、失踪者が生存していることを分かっているのであれば、あらかじめ離婚訴訟などで離婚を確定させてから再婚をするべきでしょう。

(「悪意の遺棄」などを離婚原因として、離婚することができる場合が多いと思われます。)

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.18更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

会社に就職するとき、身元保証書を差し入れるように求められることがあります。

会社は、面接などをしているとはいえ、まったくの他人を雇うわけですから、何か事件があったときなどに、そのリスクを回避するため、身元保証書の差し入れを求めるわけです。

 

このような場合、親族や知人などに頼んで、身元保証人になってもらうことが多いのではないかと思います。

 

しかし、一旦、身元保証人になったからといって、いつまでも身元保証をしなければならないとすると、それは身元保証人にとって過酷となってしまいかねません。

 

特に、人間というものは、年を取る毎に変わっていくもの。真面目な人が、数年の環境の変化でギャンブルにはまったり酒に溺れたりすることも、時折あることではないでしょうか。

 

そこで、身元保証人の義務を軽減する法律が規定されています。「身元保証に関する法律」という法律です。その法律には、概要、以下のような規定がなされています。

 

1条 期間を定めずにされた身元保証は、成立の日より原則3年(一定の場合5年)、効力を有する。

 

2条 5年を超える身元保証はできない。更新する場合も、更新のときから5年を超える身元保証はできない。

 

3条 会社は、従業員が不誠実などであって身元保証人の責任が発生しそうな場合や、仕事内容の変更や転勤などで身元保証人の監督が困難になりそうな場合などは、身元保証人にその内容を通知しなければならない。

 

4条 上記の通知などで、前条の事実があることが判明したときは、身元保証は解除(解約)することができる。

 

このように、身元保証は原則3年間有効ですので、その有効期間が過ぎれば、当然、身元保証人の義務を免れることとなります。

 

また、身元保証の有効期間であっても、保証をしてあげた従業員が不誠実な行動をしていたり、異動、転勤などがあったりした場合には、身元保証を解除して、その責任から免れる余地があります。

 

その場合には、会社に身元保証を解除する旨の通知を内容証明郵便などで出しておけばよいこととなります。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.17更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

未成年の子どもは、法律の規定上、親の親権に服するものとされています。

もっとも、その例外を定めている規定もあります。例えば、未成年の子どもが結婚したときには、「それによって成年に達したものとみなす」ことになっており、親の親権に服さなくなることとされています。

 

ところで、現在の民法上、男性は18歳以上、女性は16歳以上で結婚することができます。

 

このような未成年の男女が婚姻し、子をもうけた場合、その子の親権は、親である未成年の夫婦が持つことは問題がありません。

 

問題は、親の反対などの理由で、未成年の男女が法律上結婚していない場合、生まれてきた子の親権を誰が行使することになるか、という点です。

 

未成年の男女は、法律上結婚していない以上、成年に達したとみなされることなく、未成年のままですから、子の親権をそのままでは行使することができないので、このような問題が生じるのです。

 

このような場合について、民法は、「親権を行う者は、その親権に服する子に代わって親権を行う」と規定しています。

すなわち、未婚である未成年の男女の間に生まれた子どもの親権は、未成年の男女(多くの場合は女性側でしょう)の親権者、つまり、生まれてきた子どもの祖父母が行使することとされているのです。

 

このように、子どもの実の父母でありながら、親権の行使をすることができない場合があります。現実とはだいぶ乖離している規定ではないかと思いますので、注意すべきでしょう。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.16更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

労働基準法上、常時10名以上の労働者を雇用している会社は、「就業規則」という規則を作らなければならないこととなっています。

 

就業規則とは、会社の運営などについて定めた規則であり、労働者の労働条件(賃金、休職や有給休暇など)や役職、懲戒事由などが規定されているものです。会社によっては、「賃金規定」などの名目で規定されていることもあります。

 

就業規則は、会社と労働者との関係を規律する、いわば会社の「憲法」のようなものですから、一定の規模以上の会社には、就業規則が必要とされているのです。

 

さて、会社では、正社員だけでなく、非正規社員(パート社員など)が雇用されていることが多いといえます。特に、最近の会社では、非正規雇用の割合が高まっているようであり、多様な働き方が生じています。

 

上述の就業規則は、原則として、一般社員だけでなく、このような非正規社員にも適用されます。すなわち、原則として、非正規社員にも、正社員と同様の労働条件等が適用されることとなります。

 

これは、労働者側としては望ましいことですが、会社側からすれば、困ったこととなってしまいます。会社としては、正社員と違った雇用形態を取るために非正規社員を雇ったのに、正社員と同様の労働条件が適用されてしまうなどとは考えていないはずです。

 

このような事態を避けるためには、就業規則に、「非正規社員には、この就業規則は適用しない。」などの条項を設けて、非正規社員に当該就業規則が適用されないようにしなければなりません。

 

もっとも、このような規定をするだけでは、手続きとして不十分です。非正規社員との関係で、会社との関係を規律する就業規則がないのは、労働者の保護に欠け、適切でないからです。

 

会社としては、非正規社員との関係を規定する、新たな「非正規社員用就業規則」を作成するなど、正社員と別の取り扱いをする従業員との関係を規定する就業規則を設定する必要があります。

 

なお、非正規社員の中で、さらに雇用条件に差異を設けようとするのであれば、それぞれについて就業規則を設定する必要があると思いますので、注意が必要でしょう。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.15更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

前回の繰り返しになりますが、遺言書の作成に当たって、自筆での作成、日付の記載、氏名の記載、押印の4要件を満たさない遺言書は無効になってしまいます。

 

このうち、前回は、遺言書の有効性に関し、押印の問題点についてお話ししました。

今回は、上記の4要件のうち、「自筆での作成」についてお話ししたいと思います。

 

遺言書は、遺言者の自筆で記載されたものでなければなりません。しかし、何らかの理由で自筆での記載ができない場合や、音声や映像で遺志を遺したいと考える場合もあるかも知れません。

このような場合、遺言書は有効といえるのか、以下、考えてみます。

 

1 代筆の場合

遺言者の腕が不自由であるとか、高齢で指が震えるなどの理由で、遺言書を代筆してもらった場合、その遺言書が「自筆での作成」ということができるかが問題となります。

 

この問題を考えるに当たっては、遺言書の有効要件に「自筆での作成」が要求される趣旨を考える必要があります。

自筆での作成が要求されている趣旨は、自筆であれば、それを遺言者が自分の意思に基づいて記載したものであると判断することができ、遺言者の遺志を明らかにすることができるところにあります。

 

とすれば、代筆での作成であれば、遺言者が自分の遺志に基づいて記載したか否か判然としなくなってしまいますので、上記趣旨に反してしまうこととなります。

 

このような理由から、代筆で作成された遺言書は、無効であると解釈すべきです。

 

2 遺言書作成を介助した場合

代筆とまでいかなくても、腕や目が不自由な人の遺言書記載を手伝う(介助する)場合もあり得るでしょう。このような場合に、作成された遺言書は有効となるのでしょうか。

 

この問題も、結局は、上記の趣旨に適合しているか否かで判断されるものといえます。すなわち、介助と言いながらも、実質は代筆と見なしうる場合(例えば、手を添えて、遺言書の記載を誘導した場合など)には、遺言書は無効と解釈すべきです。

 

一方、手を紙のところまで誘導しただけであるとか、筆記を容易にするために支えただけであるなどの場合は、自筆での記載の要件を満たし、遺言書が有効と解釈されることもあり得るものと思います。

 

3 パソコンで作成した場合

パソコンでの遺言書は、誰でも作成することができるものですから、遺言者本人が自分の遺志に基づいて記載したことが明らかではありません。

とすれば、上記の趣旨に照らし、パソコンで作成された遺言書は無効と解釈すべきです。

 

4 録音・録画による場合

なお、録音・録画によって遺言がなされた場合、遺言者の遺志は明らかなものであるとはいえるでしょうが、民法上、遺言は、書面によってなされるものとされている(まさに遺言「書」であることが必要)ことからすれば、録音・録画による遺言は無効であると考えられます。

 

5 自筆での遺言書作成ができない事情があるとき

どうしても自筆での遺言書作成が困難である場合には、自筆で記載する必要のない公正証書遺言という方式を用いれば、問題は生じないこととなりますので、利用を検討されると良いと思います。

投稿者: 流山法律事務所

2015.04.15更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

遺言書の作成に当たり、いくつか注意すべき点があります。自筆での作成、日付の記載、氏名の記載、押印の4点です。これらの要件を欠く遺言書は、無効とされてしまいます。

今日は、この注意すべき点のうち、「押印」に関する問題を検討します。

 

遺言書を作成しているとき、ハンコがみつからず、困ってしまうこともあるかも知れません。そのときに、ハンコ以外のものを遺言書に記載したとき、遺言書は有効とされるか否か、考えてみたいと思います。

 

1 拇印を押した場合

指にインクをつけて、押したものを拇印といいます。ハンコの持ち合わせがないときに、昔からよく利用されている方法です。

(時代劇などでも、借用書に拇印を押させるシーンが出てくることがありますよね。)

この拇印は、ハンコの代わりになるのでしょうか。

 

この問題を考えるには、なぜ遺言書にハンコを押す必要があるとされているのか、その趣旨を考える必要があります。

 

遺言書に押印が必要とされている趣旨は、①ハンコを押させることによって、その遺言書の内容が遺言者の真意に基づくものであることを確認すること、②重要な書類を完成させるには押印すべきであるという日本の法慣行(常識)、の2点にあると考えられます。

 

そして、拇印を押せば、上記①②の趣旨は十分に果たされるものと考えられます。とすれば、拇印が押してある遺言書も、押印があるものとして、有効なものと解釈すべきでしょう。

 

2 花押を記載した場合

花押とは、サインを図式化したもので、これも歴史上、長く用いられている形式です。ハンコが出回る前は、もっぱら花押が用いられていたようです。

現在でも、内閣の閣議の際の署名に、花押が用いられることもあったりしますので、むしろ正当な手法と言うべきなのかも知れません。

 

花押については、最近、高裁レベルで、印として有効であるとする判決が出ています。

花押は、印鑑よりも偽造が難しいものであることを踏まえ、このような判断が下されたようです。

 

もっとも、この判決の場合、被相続人が生前から花押を使い続けていたという事情があるようですので、この点も踏まえた判断がなされたというべきでしょう。

また、古文書などを見ると、簡単な形の花押(○や△など)の略花押と呼ばれる花押が用いられている場合がありますが、このような形の花押であれば、偽造が容易であるといえますので、印として有効であるということは難しくなるのではないかと思います。

投稿者: 流山法律事務所

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