2015.03.25更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

先日、柏で消防車が出動しているのを見ました。危険な火事現場に行き、消火に当たる消防士の方々には、頭が下がります。

 

さて、故意で火を付けた場合、すなわち放火をした場合、刑事上も民事上も、厳しく責任追及されることはいうまでもありません。

 

では、誤って火を出してしまった場合、すなわち失火の場合は、どのような責任を負うこととなるのでしょうか。

 

まず、刑事上の責任ですが、刑法に「失火罪」の規定があります。しかし、法定刑はきわめて軽く(50万円以下の罰金)、放火のときの厳重な処罰とは雲泥の差があります。

 

では、民事上の責任はどうなるでしょうか。例えば、失火が延焼し、近所の家を焼いてしまったときに、火を出してしまった人は、どのような責任を負うのでしょうか。

 

もちろん、被害を受けた人は、被害全額を損害賠償して欲しいと考えるはずです。しかし、法律(失火責任法、という法律です。)は、失火が単なる過失でなく、重大な過失である場合のみに限って、不法行為責任を認める(損害賠償を認める)と規定しています。

 

これは、木でできている家が多い日本では、一旦、火が出てしまえば、多くの建物に延焼してしまう可能性が高く、損害賠償額がきわめて高額になってしまって、酷であるから、という理由に基づくようです。

 

そして、「重大な過失」があると評価されるためには、よほどの事情が必要です。単に、たばこの火の消し忘れであるとか、たき火を十分に消火しなかったとか、天ぷらを揚げている最中に火が入ったなどの事情だけでは、重大な過失があったとは評価されづらいでしょう。

 

このように、失火の場合は、刑事上も民事上も、責任が相当程度軽減されているのです。

 

(なお、失火責任法で責任が軽減されているのは、いわゆる「不法行為責任」についてのみです。別の責任、例えば「債務不履行責任」については軽減されていません。借家を失火で燃やしてしまった場合などは、債務不履行に基づく損害賠償請求が認められ得ると思います。)

投稿者: 流山法律事務所

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