2015.07.16更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

結婚をするには、夫と妻の双方に、婚姻する意思がなければなりません。夫婦として共同生活を営む意思がなければ、婚姻届を役所に出していたとしても、その婚姻は無効とされてしまいます。

 

例えば、国籍を取得させる目的で、外国人女性と日本人男性が結婚したとした場合、その結婚には、双方に婚姻する意思がないということができますので、その結婚は無効となります(そればかりか、場合によっては、公正証書原本不実記載という罪に問われかねないのです。)。

 

結婚に、婚姻意思が必要とされたのは、そうしなければ、夫婦の結合関係のない仮想婚姻が作出されてしまう可能性が高く、それを防止する必要があるためと思われます。

 

一方、離婚については、離婚届を出すことへの合意があればよいとされています。夫婦の共同生活関係を解消する意思がなくても、離婚届を出すことを了解していたのであれば、離婚が成立してしまうのです。

 

例えば、生活保護を受けるため、形式的に離婚届を提出した場合には、仮に夫婦の同居が続いていたとしても、離婚は成立してしまうことになります。

 

離婚をするつもりがなくても、了解して離婚届を出した以上、離婚は成立してしまうこと、その場合は、相続などの点で、不利益が生じかねないこと、の2点には、注意が必要でしょう。

投稿者: 流山法律事務所

2015.07.14更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

以前にもお話ししたことがあるかと思いますが、民法には、「消滅時効」という制度があります。これは、一定期間、権利が行使されない場合、その権利を消滅させる制度で、永続した事実関係を尊重し、かつその間の複雑な権利関係の争いを避けるところに、この制度の趣旨があります。

 

ところで、家を借りて生活していると、家賃や管理費など、いろいろな費用がかかります。これらの費用についても、一定の期間、権利行使されない場合には、消滅時効の援用により消滅してしまう(すなわち、家賃等を支払う義務がなくなる)可能性があります。

 

家賃についてですが、毎月、定期的に家賃を支払う約束になっている場合は、消滅時効の期間は5年となっています。ほとんどの方は、毎月1回、家賃を支払う契約になっていると思われますので、家賃の消滅時効期間は5年である、と覚えておけば、まず間違いはないでしょう。

 

もっとも、滞納と支払いを繰り返しているような場合、支払われた家賃は、通常は古い滞納分の家賃に充当されることとなりますので、注意が必要です。

 

例えば、平成22年1月分~3月分の家賃を滞納したが、それ以降は約束どおり家賃を支払っているような場合は、通常、平成22年4月に支払った分が平成22年1月の滞納分に充当され(平成22年4月分は滞納扱いとなる)、平成22年5月に支払った分が平成22年2月の滞納分に充当され…という処理になります。

 

すなわち、上記の例では、直近3か月(平成27年7月分、6月分、5月分)が滞納になるだけで、消滅時効の期間を満たしていないこととなります。

 

なお、マンション等の管理費についてですが、これについての消滅時効期間も、家賃と同様、5年間とされています。この点については、争いがあったようですが、最高裁判所が5年とするとの判断を下し、決着した問題です。

投稿者: 流山法律事務所

2015.07.13更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

最近、子どもを誘拐しようとして犯人が捕まる事件が多発しているように感じます。

少し前には、警察官が子どもを誘拐しようとして逮捕されるなど、信じられないような事件も発生しています。

 

ところで、誘拐とは、どのような行為をいい、どのような刑罰が科せられることとなっているのでしょうか。

誘拐については、刑法224条以下に、「略取及び誘拐の罪」として規定がなされています。

 

第224条

未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。

 

ここで、「略取」とは、暴行又は脅迫によって、被害者の身柄を得ること、「誘拐」とは、欺罔(だますこと)や誘惑を手段として被害者の身柄を得ること、をいいます。

 

つまり、無理矢理連れてくるのは「略取」、甘い言葉でだまして連れてくるのは「誘拐」ということになります。

 

略取・誘拐は、その目的によって、刑罰が定められています。いずれも、きわめて重い刑罰になっています。

 

例えば、「営利、わいせつ、又は結婚の目的」で略取・誘拐をした場合は、1年以上10年以下の懲役となります。

 

また、「身代金目的」で略取・誘拐をした場合は、無期懲役又は3年以上の懲役となります。

 

被害者を殺害してしまった場合は、上記の略取・誘拐罪に加え、殺人罪が成立することとなります。誘拐の罪だけでも重いのに、殺人罪が付け加わってしまうのですから、場合によっては死刑となることも多いといえます。

 

略取・誘拐の罪は、検挙率も非常に高く、しかも刑罰も重いわけですから、まったく割に合わない犯罪といえるでしょう(およそ犯罪は割に合わないものではありますが…。)

 

なお、被害者の安全を守るため、被害者を解放した場合は、刑が軽減されるほか、身代金目的の誘拐の準備(予備)をした人が、実際に誘拐する前に自首したときは、刑の軽減又は免除がなされることとなっています。

投稿者: 流山法律事務所

2015.07.11更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

昨日の午後、流山市上空を、飛行船が飛んでいるのを見ました。子どもの頃は、飛行船が飛んでいるのを結構見た記憶がありますが、最近では、ほとんど見ないような気がします。

 

さて、当然のことですが、飛行船は、勝手に飛ばしていいというものではありません。好き勝手に飛ばしてしまうと、ほかの航空機の飛行の安全に悪影響を及ぼしてしまうなど、重大な問題が生じかねないからです。

 

そこで、法律は、「航空法」という法律をもって、飛行船の飛行について、規制を行っています。

 

航空法2条1項には、「この法律において「航空機」とは、人が乗って航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機及び飛行船その他政令で定める航空の用に供することができる機器をいう」との規定がされており、飛行船が「航空機」として、規制の対象となることが明記されているのです。

 

もっとも、上記航空法2条1項をよく読むと、「航空機」とされて規制を受けるのは、「人が乗って航空の用に供することができる」飛行船に限られています。

 

飛行船の中には、人が乗ることが予定されておらず、無線操縦によって、無人で飛行しているものも多くあります。私が昨日見たような、宣伝目的の飛行船などは、無線操縦によって飛行していることが多いようです。

 

その場合には、基本的には、当該飛行船は「航空機」と評価されませんので、航空法の対象外となります。

 

余り詳しくありませんが、最近、流行の「ドローン」も、無線操縦によって飛行しているようですので、法的には、飛行船と同じ、ということになりましょうか。

 

とはいっても、完全に好き勝手に飛行させていい訳ではなく、飛行の許可が必要な場合や、飛行させてよい場所の規制(飛行させる場所が、空港から一定以内の距離であったり、飛行高度が、規制より高すぎたりしてはならない)が及ぶ場合などもありますので、注意が必要です。

 

流山市上空の飛行船

投稿者: 流山法律事務所

2015.07.10更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

幼少期の性的虐待により、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病を発症したとして、女性が加害者の男性に損害賠償を求めていた裁判で、最高裁は、損害賠償を命じた、札幌高裁の判断を支持する判決を下しました。

 

この事件で、問題となっていたのは、何十年も前に行われた虐待の責任を問うことができるかという点です。

 

事件が発生した後、時間が経ってしまうと、事件による権利関係の存否が不明確になってしまうことがほとんどであると思います。はるか昔の事実について、記憶のある証人を見つけたり、客観的な証拠を獲得したりすることは、不可能であることが多いといえるでしょう。

いわば、権利関係が「宙ぶらりん」な格好になってしまうこととなってしまうのです。

 

そのため、法律は、権利関係を速やかに確定させるため、権利を一定の期間内に行使しないと、その権利が消滅する制度(除斥期間、じょせききかん)を設けています。

 

本件のような、虐待を原因とする損害賠償請求については、除斥期間は、「不法行為の時から20年」と規定されています。すなわち、虐待があったとしても、不法行為の時から20年経ってしまったら、もはや損害賠償を請求することができなくなってしまうということになるのです。

 

本件でも、一審の裁判所は、性的虐待のときから計算すれば、すでに除斥期間が過ぎているとして、女性の訴えを斥ける判決を下しています。

 

一方、控訴審である札幌高裁は、女性の訴えを認める判決を下しました。

これは、除斥期間の起算点である「不法行為の時」を、性的虐待のときではなく、性的虐待によって病気が発症したとき、と解釈したもので、除斥期間の起算点を後ろにずらすことで、女性の権利の保護を図ったものといえます。

 

PTSDやうつ病は、被害に遭った後、すぐに発症するものではなく、時間を置いてから発症することがあります。本件でも、PTSDは1983年に、うつ病は2006年に、それぞれ発症したという事情があるようです。

 

札幌高裁は、PTSDについては、発症時からすでに20年以上経っていることから、除斥期間にかかっていると判断しましたが、うつ病については、いまだ20年が経過していないことから、この点を捉えて、損害賠償の請求を認めたものです。

今回の最高裁は、この札幌高裁の判決を支持するものでした。

 

本件は、虐待などの除斥期間の起算点を、虐待時でなく症状発症時として、除斥期間の起算点を後ろにずらし、少しでも被害者の権利保護を拡大しようとした点において、評価できるものといえるでしょう。

 

もっとも、幼少期の虐待については、すぐに救済を求めることが難しいという特性があり、いざ成人して被害の回復を求めようとしても、除斥期間の壁によって救済ができなくなってしまっていることもあると思われます。

 

少なくとも幼少期の虐待などについては、除斥期間について、法的な整備を行う必要性があるのではないでしょうか。

投稿者: 流山法律事務所

2015.07.09更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

相続事件を担当していて、時折、問題となるのが、香典についての取り扱いです。

 

香典とは、亡くなった方の霊前に供える金銭のことをいいますが、葬儀の規模によっては、香典だけで数百万円にもなることがあります。その香典を、相続人間でどのように分配するかで、紛争が生じることがあるのです。

 

この問題を考えるに当たっては、香典がだれに贈られたものであるかを検討する必要があります。

 

もし、香典が亡くなった方に贈られているものであれば、香典は亡くなった方のものとなる(=相続の対象となる)こととなるでしょうし、香典が喪主に贈られたものであるとすれば、香典は喪主のものとなる(=相続の対象とならない)こととなるでしょう。

 

裁判例では、香典は喪主へ贈られたものである、と評価されているようです。通常、香典は、葬式に関連する出費の一部に充ててもらい、遺族の負担を軽くするために支払われるものといえますので、葬式の主催者である喪主に取得する権利があるとされているようです。

 

良く考えてみれば、既に亡くなってしまっている方にお金を贈与することができるはずがない(贈与の相手方が不存在である)のですから、香典を亡くなった人のものと解釈して、相続財産に含めるという考えは、少し理屈に合わないのかな、とも思います。

 

もっとも、上記のとおり、香典は、葬式に関連する出費の一部に充てるために贈られるものですから、香典を自由に使用できると考えるべきではなく、葬儀に関する費用のために使われなければならないと思われます。

 

例えば、喪主が香典を受け取っておきながらそれを葬儀費用に充てず、相続人に葬儀費用の負担を求めてくるようなことは、香典のそもそもの目的から外れてしまっており、許されないというべきでしょう。

 

(もちろん、香典を葬儀費用に充てたうえで、香典だけでは葬儀費用が足りない場合には、相当の負担を求めても差し支えないものと考えます。)

 

では、香典を葬儀費用に使用しても、なお相当額が余った場合は、どのように処理すべきでしょうか。

 

理屈でいえば、香典は喪主に贈与されたものですから、喪主が余った香典をすべて取得してよいことになるでしょう。もっとも、それでは、親族間に無用な波風を立たせかねませんので、①相続人間で話し合って分割したり、②お墓を守る人(祭祀承継者といいます)に渡して費用に充ててもらったりする方が良いのかも知れません。

投稿者: 流山法律事務所

2015.07.07更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

私の加入している、千葉労働弁護団のホームページが、間もなく出来上がるそうです。このホームページができたことで、少しでも多くの労働者の方に、労働弁護団のことを知っていただけたら嬉しいです。

 

ホームページを作成するに当たって、労働弁護団のメンバーで、手分けをして、アップロードする文章を作成しました。

 

私は、Q&Aの一部と、マタハラ訴訟についての判例紹介のコラムを書かせていただきました。

 

マタハラ訴訟は、病院の管理職として勤務していた女性が、妊娠したため軽易な業務への異動を求めたところ、異動後に管理職を外され、育児休業終了後も元の管理職に戻されなかったことから、降格の無効や損害賠償などを病院側へ求めた、という事件です。

この事件で、最高裁は、労働者側に有利な判断を下したのです。

 

興味を持たれた方は、千葉労働弁護団のホームページをご覧ください(まだ公開されていないみたいですので、少しお待ちいただくこととなりそうですが。)。

投稿者: 流山法律事務所

2015.07.04更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

振り込め詐欺(オレオレ詐欺)でお金を振り込んでしまった場合は、直ちに警察や金融機関に連絡して、口座の凍結を行う(犯人に引き出されることがなくなる)必要があります。振り込んだお金が引き出される前に口座を凍結することができれば、被害の回復を図ることができるでしょう。

 

また、仮に振り込んだお金が既に引き出されてしまっていたとしても、振り込め詐欺の被害者は、詐欺をした加害者がどこの誰だか分かれば、損害の賠償を請求することができます。

 

しかし、言うまでもありませんが、詐欺師が誰なのか把握するのは困難ですので、ほとんどの場合、被害回復を図ることができないのが現状です。

 

ところで、振り込め詐欺で、お金を振り込んでしまった場合、その振込先の金融機関や、振り込んだ先の口座の口座番号、その名義は、容易に把握することができます。

 

そこで、振り込め詐欺に使用された口座の名義人に対して、被害を賠償するよう請求することができるのであれば、被害回復に役立つ可能性があります。

 

この点、口座名義人が、詐欺などの犯罪行為に使用される可能性を認識した上で、自分の口座を流通させたような場合、例えば、暴力団などに自分名義の通帳やキャッシュカードを売却してしまったような場合には、口座名義人にも損害賠償を求めることができると考えられます。

 

口座は、振り込め詐欺を行うに不可欠なものですので、口座名義人が直接振り込め詐欺に関与していないとしても、上記の事情があれば、損害賠償を認めるべきという判断であると思われます。

 

もっとも、口座を売るような人は、たいがいお金に困っている人が多いでしょうから、裁判で勝ったとしても、被害全額の回復を受けることは難しいのではないでしょうか。

投稿者: 流山法律事務所

2015.07.02更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

結婚していない男女間に生まれた子は、法律上、誰が父親であるか明らかではありません。そこで、法律上、父との間に法的な親子関係を発生させるための方法として、認知の制度があります。

認知は、法の定める方法で役所に届出をすることによって行います。

 

子の真実の父親であれば、当然、ただちに認知の届出をして、法的な親子関係を明らかにすべきです(仮に、男性が出産に反対していた事実があったとしても、同様に考えるべきでしょう)。

 

認知は、原則として、認知する(父)親が単独ですることができます。子ども自身や、母親の同意は必要ありません。

 

もっとも、例外として、①すでに成人に達した子は、その子の同意が必要、②胎児の場合は、母親の同意が必要、などと、民法上規定されています。

 

①は、未成年の間、認知せずに放置しておきながら、成人してから認知し、扶養を求める等の身勝手を防ぐため、②は、胎児を宿している母親の意思・名誉を尊重するために、例外的な規定が置かれているのです。

 

ところで、まったく知らない人が、勝手に子を認知してしまったときはどうなるのでしょうか。

認知自体は、単独でできてしまうので、このようなことが起こる可能性も否定できないのです(もっとも、認知すると養育費の支払い義務などの義務が発生しますので、勝手に認知する問題が起こる可能性は非常に小さいと思いますが。)。

 

このような場合は、認知が事実に反することを主張して、認知の無効の訴えを提起して、虚偽の認知を無効にしてもらえばよいと思われます。

投稿者: 流山法律事務所

2015.07.01更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

今日は、千葉労働弁護団の集会に出席するため、先ほどまで、千葉市の弁護士会に行っておりました。

今回は、千葉労働弁護団の総会日であることもあってか、20人近い団員の弁護士が集会に参加しており、非常に熱気がありました。

 

集会では、就業規則の不利益変更の問題や、パワハラの問題について、実例を挙げながら解説をしてもらうことができ、知識を新たにすることができました。

 

また、建設アスベストについての訴訟についても、教示を受けることができました。この訴訟の現状や乗り越えるべき問題点、今後の目標等について、実際に事件を担当している弁護士から聞くことができ、とてもためになりました。

 

今回は、時間が取れず、懇親会に参加できなかったのが心残りです。

投稿者: 流山法律事務所

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