2015.07.09更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

相続事件を担当していて、時折、問題となるのが、香典についての取り扱いです。

 

香典とは、亡くなった方の霊前に供える金銭のことをいいますが、葬儀の規模によっては、香典だけで数百万円にもなることがあります。その香典を、相続人間でどのように分配するかで、紛争が生じることがあるのです。

 

この問題を考えるに当たっては、香典がだれに贈られたものであるかを検討する必要があります。

 

もし、香典が亡くなった方に贈られているものであれば、香典は亡くなった方のものとなる(=相続の対象となる)こととなるでしょうし、香典が喪主に贈られたものであるとすれば、香典は喪主のものとなる(=相続の対象とならない)こととなるでしょう。

 

裁判例では、香典は喪主へ贈られたものである、と評価されているようです。通常、香典は、葬式に関連する出費の一部に充ててもらい、遺族の負担を軽くするために支払われるものといえますので、葬式の主催者である喪主に取得する権利があるとされているようです。

 

良く考えてみれば、既に亡くなってしまっている方にお金を贈与することができるはずがない(贈与の相手方が不存在である)のですから、香典を亡くなった人のものと解釈して、相続財産に含めるという考えは、少し理屈に合わないのかな、とも思います。

 

もっとも、上記のとおり、香典は、葬式に関連する出費の一部に充てるために贈られるものですから、香典を自由に使用できると考えるべきではなく、葬儀に関する費用のために使われなければならないと思われます。

 

例えば、喪主が香典を受け取っておきながらそれを葬儀費用に充てず、相続人に葬儀費用の負担を求めてくるようなことは、香典のそもそもの目的から外れてしまっており、許されないというべきでしょう。

 

(もちろん、香典を葬儀費用に充てたうえで、香典だけでは葬儀費用が足りない場合には、相当の負担を求めても差し支えないものと考えます。)

 

では、香典を葬儀費用に使用しても、なお相当額が余った場合は、どのように処理すべきでしょうか。

 

理屈でいえば、香典は喪主に贈与されたものですから、喪主が余った香典をすべて取得してよいことになるでしょう。もっとも、それでは、親族間に無用な波風を立たせかねませんので、①相続人間で話し合って分割したり、②お墓を守る人(祭祀承継者といいます)に渡して費用に充ててもらったりする方が良いのかも知れません。

投稿者: 流山法律事務所

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