2015.02.28更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

先日来、相続人が相続権を失う場合についてお話してきました。

おおむね、お話しすべきことはしたと思いますが、一点だけ、補足のお話をさせていただきたいと思います。

 

それは、遺言書の隠匿や破棄に関して、「不当な利益を得る目的がなかったとき」の問題です。

 

例えば、親が亡くなったため、兄弟3人に相続が発生した場合をお考えください。このとき、二男がたまたま遺言書を見つけて読んでみたところ、遺言書に、「二男に遺産をすべて相続させる」と書かれていたとします。

しかし、二男は、「自分がすべて相続するのはおかしい、遺言書を隠してなかったことにし、兄弟3人で3分の1ずつ遺産を相続しよう」と思い、遺言書を隠してしまったような場合、どのように考えるか、という問題があるのです。

 

形式的に見れば、二男は遺言書を隠匿したのですから、相続人から排除されてしまいそうです。しかし、自分に有利な遺言書を隠して他の相続人に有利な遺産分割をした二男を、相続人から排除するのもおかしい気がします。

 

この点に関し、裁判所は、自分に有利な遺言書を隠したり破棄したりした相続人について、相続に関して「不当な利益を得ることを目的とするものでなかった」ことを理由として、相続権を失わないと判断しました。

 

このように、遺言書が隠されたり破棄されたりした場合であっても、その遺言書の内容いかんによっては、その者が相続人から排除されないこともあります。ご留意ください。

投稿者: 流山法律事務所

2015.02.27更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

昨日、遺言書を隠匿したり破棄したりしてしまった場合、相続権を失う結果となる、とご説明しました。今日は、このほかに、相続人が相続権を失う場合があることについてお話しします。

 

昨日は、民法891条をご覧いただきました。遺言書の隠匿や破棄については、民法891条のうち、5号(5番目の項目)に規定されています。

 

こう申し上げると、皆さんは、「じゃあ、1番目から4番目は?」と疑問に思われると思います。実は、1番目(1号)から4番目(4号)にも、相続人が相続権を失う場合について規定されているのです。

 

まず、第1号(1番目)には、「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者」は、相続人から排除される規定があります。

つまり、被相続人(例えば親)を殺したり、相続人(例えば兄弟)を殺したりした者については、相続人とはなれなくなるのです。

 

次に、第2号(2番目)には、「被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。」との規定があります。

被相続人の死亡が、殺害であったにもかかわらず、告訴告発をしないで放置していると、相続人から排除されてしまう可能性があるのです。

 

また、第3号(3番目)には、「詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者」が、第4号(4番目)には、「詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者」が、それぞれ規定されています。

被相続人の自由な遺言書作成を妨げた以上、このような相続人から相続権をはく奪することこそが正義に適う、と考えられているからでしょう。

投稿者: 流山法律事務所

2015.02.26更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

相続が発生した場合、遺言書があれば、基本的に、その遺言書に則って遺産の分配が行われることとなります。しかし、遺言書は、亡くなった方の遺志に基づいて作成されるものですから、相続人間において、相続額に多寡が生じてしまうことがあります。

 

例えば、相続人が長男・二男・三男の三人だけだった場合、遺言書がなければ、遺産は3分の1ずつ配分されることになりますが、遺言書があれば、例えば長男に6分の4、二男・三男に6分の1ずつ相続させる、ということも可能になるわけです。

 

このように、遺言書によって、配分される遺産額が少なくなってしまう相続人にとっては、遺言書が、いわば「邪魔」になることもあるのです。

 

では、かかる遺言書を隠したり破棄したりしてしまったらどうなるのでしょうか。民法は、以下のように、このような場合の規定を定めています。

 

民法891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。

5  相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 

つまり、遺言書を隠したり破ったりした人は、相続を受ける権利を失うということになります。遺言書を隠す等した者は、被相続人の遺志をないがしろにし、家族の協同関係を破壊したといえますので、遺産を取得できなくなっても仕方ないとされているのです。

 

たとえ、遺言書の内容が自身にとって不利なものであっても、隠したり破棄したりすれば、もっと重い結果を招くこととなりかねません。お気を付けください。

投稿者: 流山法律事務所

2015.02.25更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

先日、前橋地方裁判所桐生支部まで行ってきました。流山法律事務所からは、東北道を利用して、車で約2時間の道のりでした。

車でなく、電車で行くことも検討したのですが、どうしても乗り継ぎが悪く、時間がかかってしまうため、やむなく車で桐生まで向かいました(事故を起こさなくてよかったです)。

 

桐生の裁判所には、「免責審尋」という、自己破産の手続きに出頭するために行ったのですが、手続き自体は、5分かからずに終わってしまいました。

5分のために往復4時間かけて裁判所に出頭するという、割に合わない日でした(裁判期日の時間より、交通の時間の方が長いことは、割とよくあることではありますが。)。

 

久しぶりに桐生の裁判所に行けて、懐かしかったから良し、としておきましょう。

kiryu 27.2.13

 

 

 

投稿者: 流山法律事務所

2015.02.24更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

一般に、アメリカは訴訟大国である、と言われています。すぐに訴訟を提起し、黒白をはっきりさせようとするお国柄ということです。

その一方、日本は、訴訟を嫌う傾向にあるように思います。もめ事を嫌うお国柄、とでもいうのでしょうか。

 

もっとも、日本でも、最近では、訴訟で結論をハッキリさせようとする傾向があるのではないか、と思います。訴訟で権利関係を明らかにすることは、決して悪いことではありませんので、そのこと自体は良い傾向であろうと考えています。

 

とはいえ、訴訟をやたらに提起し、自分の勝手な意見を押し通そうとするのであれば、そのような目的に出た訴訟は、決して許されるべきではありません。

訴訟を提起することは、憲法で認められた権利ではありますが、その権利は無制限に認められるものではなく、当然に限界があるのです。

 

例えば、自分の主張に理由がないことが、客観的な証拠上、ハッキリしているにもかかわらず、何度も訴訟提起をしたり、一度、裁判で敗訴した事件を蒸し返し、繰り返し訴訟提起をするような場合は、不法行為として、損害賠償をしなければならない場合があります。

 

また、相手から訴訟を起こされたとき、自分の主張に理由がないことが明らかであるにもかかわらず、不当な応訴を続けるなどして事件解決を妨げたような場合にも、不法行為責任が認められてしまう可能性もあります。

 

不当な訴訟提起や応訴に対して、不法行為が成立するとして、損害賠償義務を認めた判例も、いくつかあります。

 

自分の権利を実現するためのやむを得ない訴訟追行は積極的になされるべきですが、訴権の濫用と思われるような、不当な訴訟の提起・応訴は、してはならないことを肝に銘じておくべきでしょう。

投稿者: 流山法律事務所

2015.02.23更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

流山市も、つくばエクスプレスの影響か、人口が増えてきました。車で流山市内を走っていると、木地区の開発をはじめとして、家の建設が行われているのが目に付きます。

 

しかし、居住者が増えれば、隣人同士のトラブルも増えてしまう可能性があります。隣人同士の問題は、話し合いで解決できれば一番ですが、それが難しい場合は、法律の判断に委ねなければならないこともあるでしょう。

 

今回は、隣人同士の問題のうち、隣家から越境している木の枝を伐採することができるか、という問題について、お話ししたいと思います。

 

隣家の木の枝が、土地に越境している場合は、土地の所有権を侵害するものですから、隣家に対し、木の枝を切り取るように請求することとなります。隣家は、その請求を受けて、木の枝を切り取るか、その他の対策を取るか(植え替えたり、枝を曲げて隣家に越境したりしないようにするなど)を判断することとなります。

 

仮に、隣家が枝の切り取り等に応じず、何の対策もしないときは、裁判所に訴えて、木の枝の伐採の可否を判断してもらうこととなります。

 

法がこのような仕組みを取っている以上、いくら隣家の木の枝が自分の土地の上に張り出しているからと言って、それを勝手に切り取ってはならないことになります。もし勝手に伐採してしまえば、それは違法行為として、民事上・刑事上の責任を負わされてしまう可能性があります。

 

このように、木の枝を勝手に伐採してならないのは、通常、木の枝が土地に越境してきても、土地やその上に建っている建築物に、ただちに大きな影響を与えるとは考えられないという価値判断があるからでしょう。すぐに大きな問題が生じない限り、段階を踏んで隣家に請求させ、植え替え等の機会を与えることや、裁判所を関与させて、慎重に審理するべきであるということです。

 

なお、木の根が隣家から越境してきた場合には、それを自由に切り取ることが許されています。例えば、隣家の竹の根が伸び、越境してタケノコができたときは、それを自由に伐採できるのです。

(タケノコは、地中で境界を越えてきていますので、根っこに当たると解釈されています。)

 

これは、根を放置しておけば、地盤などへの影響が大きく、土地や建築物に影響を与えてしまいかねないからではないかと思います。

 

もっとも、例え根っこであっても、切り取る前には、あらかじめ隣家に話を通しておくことをおすすめします。

投稿者: 流山法律事務所

2015.02.22更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

最近、有給休暇の取得日の一部を会社が指定するなど、有給休暇に関する新たな法制度が議論されています。

しかし、現在の制度では、有給休暇は従業員が自由に取得することが出来るのが原則となっています。会社は、基本的に従業員の有給休暇の申請を受理する必要があり、ただ、「時季変更権」として有給休暇の取得が、業務の正常な運営を妨げる場合に、有給休暇の取得を別の日に変更することができることができるだけです。

 

そして、この「時季変更権」は、会社が勝手に主張することが出来るものではなく、業務が繁忙期に入っており、有給休暇を取る従業員の補充が不可能であった場合など、合理的な理由が必要であると思われます。

 

つまり、「どうせ寝ているだけなんだから会社に来い」とか、「家族よりも会社を優先すべきだ」などという理由で、時季変更権を行使することはできません。

 

では、従業員が、有給休暇中に会社にとって望ましくないと思われる行動、例えば政治集会に出席する予定があるなどの理由で、会社は時季変更権を行使することはできるのでしょうか。

 

これまでお話ししてきましたとおり、時季変更権は、有給休暇の取得が、会社の正常な運営を妨げるときにのみ認められるものです。そして、従業員が政治集会に出席することは、通常、「会社の正常な運営を妨げる」ものということはできません。会社にとっては面白くない政治集会への出席であっても、これを時季変更権を用いて阻止することはできません。

判例でも、時季変更権を用いて政治活動を阻止しようとした会社が敗訴している事例がいくつかあるようです。

 

そもそも、休暇中に従業員が何をするかということは、個人のプライベートなことですから、会社が口を出すべきではありません。会社側としては、時季変更権を行使する際には、十分に有給休暇の取得が会社の正常な運営を妨げるものであるか否かを考慮する必要があるでしょう。

投稿者: 流山法律事務所

2015.02.21更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

私事ですが、最近、後輩の弁護士や弟など、私の下の世代で、結婚が相次いでいます。そのためという訳ではありませんが、今日も夫婦関係のトラブルについてお話ししたいと思います。

 

夫婦関係でトラブルになる原因の一つに、「嘘をつく」というものがあります。夫婦間の嘘は、夫婦関係を続けるに当たって、良くないことでしょうが、法的には、夫婦間の嘘は、どのように規定されているのでしょうか。

 

例えば、民法には、「夫婦間で契約したときは、夫婦間の契約は、婚姻中いつでも、夫婦の一方から取り消すことができる」と規定されています。

つまり、民法上は、婚姻中の夫婦は、以前約束した契約を、一方的に取り消してもよいと規定しているのです。夫婦間の問題については、自分たちで話し合ってなんとかしなさい、というのが法の考え方であるから、このような規定が設けられたものと思われます。

 

しかし、注意していただきたのは、上記の条文の「婚姻中いつでも」という部分です。

これは、「離婚するまではいつでも」という意味ではなく、「婚姻関係が破綻するまではいつでも」という意味に捉えるべきであると考えられています。離婚が成立していなくても、別居するなどして、婚姻関係が事実上消滅していれば、夫婦間の契約の一方的な取り消しは許されないのです。

婚姻関係が破綻しているときには、夫婦間で話し合ってなんとかすることができないのですから、上記の民法の規定を適用することは不適当であるからです。

 

つまり、「預金のうち1000万円をあげる」とか、「この土地をあげる」などの約束(契約)が書面などでなされていれば、それを夫婦関係破綻後に、勝手に反故にすることはできないことになります(書面によらないで贈与契約がなされていた場合は、書面によらざる贈与として、撤回されてしまう可能性があります。)

 

いくら夫婦関係が良好でも、相手との契約は、慎重に行うべきことがお分かりいただけるでしょうか。

 

投稿者: 流山法律事務所

2015.02.20更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

裁判上、離婚が認められるには、民法に決められている「離婚原因」が必要です。この離婚原因は5つありますが、①配偶者の不貞(浮気)②悪意の遺棄(家出や生活費をくれない場合など)③生死が3年不明である(行方不明のとき)④強度の精神病に罹患し回復の見込みがないこと、の4つは、要件がはっきりと定められており、内容に余り疑問はありません。

 

しかし、離婚原因には、⑤婚姻を継続し難い重大な事由」という、漠然とした要件も定められています。これは、①~④のようなはっきりとした離婚原因がなくても、夫婦関係が破綻しており、維持させることが不適切な場合もあるため、一般的な要件を定めたものであると思われます。

 

このように、⑤の要件は、離婚させるか否かを判断するために柔軟な解釈を可能とするものですが、その反面、要件が漠然としているため、何が婚姻を継続しがたい重大な事由に当たるのか、激しく争われることも多いです。

 

その争いの一つに、「有責配偶者からの離婚が認められるか」という論点があります。例えば、浮気相手と同居するために家を出て行ってしまった夫(離婚原因を作った者=有責配偶者)から、妻に対して離婚の請求ができるか、という、問題です。

 

従来は、有責配偶者からの離婚請求は認められない、という取り扱いが、実務上なされていました。離婚の原因を自分で作っておきながら、離婚請求をするというのは、信義に反するという判断があったものと思われます。

 

しかし、近年、有責配偶者からの離婚請求が認められることもあるようになってきました。夫婦関係が事実上消滅していて、かつ、相手方配偶者に過酷でなければ離婚を認めても信義に反せず、むしろ実態に併せて離婚を認めた方がよいのではないかという判断があったものと思います。

 

具体的には、夫婦の別居が相当長期間(数年以上でしょう)に及んでいること、未成年の子がいないこと(子どもがいれば、親としての責任を果たさせる必要があるからでしょう)、相手方配偶者が社会的・経済的に過酷な状況にならないこと、などの要件を検討し、このような事情がなければ、婚姻を継続し難い重大な事由があるとして、離婚が認められる余地があるのです。

 

お分かりのように、すべての有責配偶者からの離婚請求が認められるわけではありませんが、必ずしも離婚が不可能であるというわけでもない、判断の難しい状況になっているのが現状です。

ご不明な点がありましたら、ご遠慮なく、流山法律事務所までご相談ください。

 

 

 

投稿者: 流山法律事務所

2015.02.19更新

流山法律事務所の弁護士の川越です。

 

明日(2月20日)、健康診断日のため、午前9時~午後3時頃までの間、臨時休業とさせていただきます。

午後3時頃以降は、通常どおり事務所を開けさせていただきますので、よろしくお願い致します。

 

なお、健康診断時間中は、お電話が繋がらなくなるおそれがありますので、ご用件がございましたら、午後3時以降にご連絡いただくか、メールにてご連絡ください。

 

お手数をお掛けいたしますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

投稿者: 流山法律事務所

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