流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。
私は、労働に関する問題に関しては、労働者側の相談を受けることが多いですが、時には会社側からのご相談をいただくこともあります。
その中で時折あるご質問に、従業員の懲戒処分に関するものがあります。
そもそも、会社と従業員は、会社が賃金を支払う代わりに、労働者は会社の指揮命令に服し、労働を提供する、という契約(雇用契約)を結んでいます。
そして、会社は、労働者に指揮命令するため、職場の規律を維持する必要があります。そこで、会社は、規律違反をした従業員に対して、懲戒処分を行うことができると考えられています。
もっとも、懲戒処分は、好き勝手に下せるものではありません。懲戒処分を下すためには、会社の服務規程(就業規則など)に、どのような行為にどのような制裁を科すのか、定めておかなければなりません。このような定めがまったくない場合は、そもそも懲戒処分を下すことはできないのです。
また、懲戒処分の内容が、非違行為に照らして相当であるか、という点も考慮しなければなりません。例えば、寝坊して、1度だけ10分程度の遅刻をした場合に、懲戒免職という懲戒処分を下してしまうのは、行き過ぎでしょう。
さらに、懲戒処分を下すには、手続きがきちんと履践されていることが必要です。例えば、懲戒処分を検討していることを告知したうえで、非違行為をした理由などを弁明させるべきであると思います。
ほかにも、ほかの懲戒事例に照らして妥当であるか、という点も考慮すべきでしょう。Aという従業員には、1回の遅刻で戒告という処分、Bという従業員には、1回の遅刻で懲戒免職、などという不平等な取り扱いをしてはいけないということです。
なお、懲戒処分の中でも重い処分(懲戒免職、出勤停止、減給)などについては、下すか否かを慎重に判断すべきです。労働者が非違行為を繰り返し、会社側も何度も注意や業務命令を下していたとか、非違行為がきわめて悪質(例えば、着服)であるときなどには、重い懲戒処分を科してもやむを得ないといえるでしょう。