2015.07.17更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

台風が、西日本を直撃しています。河川の決壊なども起こっているようです。これ以上、大きな被害が出ないよう、祈るばかりです。

 

さて、大規模な台風が来ると、トタン屋根や屋根瓦等が強風に飛ばされてしまうことがよくあります。それだけならまだ良いのですが、飛ばされた屋根瓦が隣家を直撃し、窓ガラスを壊してしまったり、壁に損傷を与えてしまったりすることもあり得ます。

 

このようなとき、被害を受けた隣家は、屋根瓦の持ち主に損害の賠償を請求することができるのでしょうか。

 

民法は、717条に、このようなときの規定を置いています。

 

民法717条1項

土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

 

簡単に言えば、土地の上にある工作物(もちろん、家屋もこれに含まれます)に、通常備えるべき安全性が欠けていたときには、原則として損害を賠償しなければならない、という規定です。

 

本件に当てはめれば、工作物である家の屋根に、通常備えるべき安全性が欠けていた場合、つまり、普通なら屋根瓦など飛ばないような風で屋根瓦が飛んで行ってしまって被害を出したら、原則として損害を賠償しなければいけない、ということになります。

 

すなわち、台風が巨大で、被害も大きく、近所でも屋根瓦等の飛散が複数発生しているような場合は、屋根に「通常備えるべき安全性」が欠けていたと評価できず、損害賠償を請求できない可能性が高いのではないかと思われます。

 

一方、台風の規模が弱く、被害もごくわずかで、近所で屋根瓦の飛散など発生していないような場合は、屋根自体に「通常備えるべき安全性」がなかったから屋根瓦が飛んだのである、と評価し得るのではないか(即ち、損害賠償の請求が認められる可能性が高いのではないか)と思われるのです。

 

最近、これが大きな問題になったのは、先の東日本大震災のときです。

地震で家の塀(土地の工作物)が崩れ、隣家に被害を与えた、という事例が数多く発生し、私も何件か相談を受けました。

 

東日本大震災は、未曽有の震災であり、当時、私がいた前橋でも震度6くらいの揺れがありました。このような震災で塀が崩れたとしても、それは、塀に「通常備えるべき安全性」が欠けていたということは困難であったと思われます。

投稿者: 流山法律事務所

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