2015.03.02更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

例えば、道端で1万円を拾ったら、どうすべきでしょうか。

 

ネコババしてしまうのは不正解です。場合によっては、遺失物横領罪という犯罪に問われることすらあります。遺失物を拾った人は、すみやかに持ち主に返還するか、警察に届けなければならないという定めが、「遺失物法」という法律にありますので、「本人か警察に届ける」が正解となります。

 

ところで、遺失物法は、正直に遺失物を届けた拾得者に対して、以下のとおり、ご褒美の規定を置いています。

 

28条 物件(誤って占有した占有した他人の物を除く。)の返還を受ける遺失者は、当該物件の価格(第9条第1項若しくは第2項又は第20条第1項若しくは第2項又は第20条第1項若しくは第2項の規定により売却された物件にあっては、当該売却による代金の額)の100分の5以上100分の20以下に相当する額の報労金を拾得者に支払わなければならない。

 

つまり、落とし主(所有権者)は、拾った人(拾得者)に対して、5%から20%までの範囲で、報労金を支払わなければならないのです。

先の例でいえば、正直に1万円を届ければ、500円~2000円の範囲で報労金がもらえることになります。

 

もっとも、落としたお金が1万円くらいならよいのですが、1000万円落とした場合は、報労金は50万~200万、1億円落とした時には、500万~2000万、10億円落とした時には、5000万~2億円…と、どんどん報労金額が上がっていってしまい、落とし主にとって、負担が大きくなってしまいます。

 

普通は、例えば1億や10億などというお金を持ち歩くことはないでしょうし、落とすことなど、まず考えられません。しかし、日本では、かつて、約78億円相当もの遺失物が、警察に届けられ、問題が発生したことがあるそうです(私が生まれたころの話です。)。

 

この問題は、東京の兜町(金融街ですね)で、ある人が、某銀行員の忘れて行った鞄を拾うところから始まりました。この鞄には、総額約78億円にも上る額面の日銀小切手などが入っていたそうです。

 

拾った人は、当然、びっくりし、すぐに警察に届け、無事に日銀小切手入りの鞄は、銀行のところへ戻りました。

とすると、次に生じる問題は、上記の「報労金」の額です。78億の5%は3億9000万円ですから、最低でもその額が拾得者に支払われた…のではなかったのです。

 

銀行は、日銀小切手が現金でなく、容易に換金できないものであること等を理由として、日銀小切手は無価値であり、報労金を支払う必要はない、と主張して、報労金の支払いを拒絶したようです。

 

当然、拾得者は納得できません。報労金を支払うように求める訴訟を起こし、決着をつけようとしました。

 

この裁判で、東京高等裁判所は、①小切手が通常使用されない日銀小切手であること、②現金化が容易でないこと(不正に換金することがまず無理であること)等から、日銀小切手は額面どおりの価値を有していないと判断し、日銀小切手の価値を額面額の2%程度として算定して、900万円弱のみの報労金を支払うように命じました。

 

このように、現金以外の落とし物であった場合、換金の容易性・困難性を含め、実際の拾得物の価値を決めた上で、報労金の額を算定することになりますので、想定よりも報労金額が低くなることもあり得ます。

 

…何か、過去の面白い判例を紹介するような記事になってしまいましたが、拾得物はきちんと警察に届けましょう、そうすればご褒美がありますよ、というお話でした。

投稿者: 流山法律事務所

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