2015.02.18更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

交通事故で被害を受けたとき、誰にその損害の賠償を請求することができるかという問題があります。

もちろん、事故を起こした加害車両の運転者に対して損害賠償請求をすることができるのは当然ですが、それ以外にも、賠償の責任を負わなければならない者もいます。

 

たとえば、会社の従業員が、その事業の執行に当たって事故を起こし、損害を与えてしまった場合には、会社も「使用者責任」という責任を負い、損害賠償をしなければならない場合があります。また、自動車の所有者など、「自己のために自動車を運行の用に供する者」も、運行供用者責任として、損害賠償をしなければならない場合もあります。

 

それでは、会社の従業員(運転手)が、勝手に私用で会社の車を持ち出し、ドライブ中に事故を起こしてしまった場合は、会社は責任を負わなければならないのでしょうか。

 

はじめに、使用者責任ですが、従業員が私用で持ち出し運転している以上、それが外観として職務遂行に当たっていると評価されない限りは、使用者責任を問うことは難しいのではないかと思います。

 

では、運行供用者の責任はどうでしょうか。まず、私用での運転の場合、会社が「運行供用者」であるといえるかが問題となります。

この点、類似の判例では、①私用で車を運転した者と会社との密接な関係の有無②日常の車輌の運転状況③車輌の保管状況、などを基準として、運行供用者であるか否かが判断されています。そして、本件では、会社と従業員とは、雇用関係という密接な関係にあり(①)、ドライバーとして道上的に自動車を運転している(②)のですから、会社は、車輌を従業員が勝手に持ち出さないよう、就業規則等で明確に禁止し、しかも、物理的に持ち出すことができないよう、車庫に鍵を掛けるなど、万全の管理体制を敷いていなければ、運行供用者に該当するといわなければならないでしょう。

 

そして、運行供用者責任については、立証責任が転換されており、運行供用者(本件では会社)の側で、自己及び運転者が自動車の運行に関して注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと、をそれぞれ立証しなければ責任を免れることができないとされています。このことからすれば、本件では、たとえ私用の運転であっても、会社はその責任を負わなければならないのではないかとおもいます。

 

このように、自動車の所有者など、運行供用者は、きわめて重い責任を負うことになります。他人(もちろん、お子さんなどの親族も含みます。)に車を使用させるときは、十分にご注意ください。

投稿者: 流山法律事務所

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