2015.02.02更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

遺言書を書いても、その記載内容のすべてが法律的な拘束力を持つものではありません。法律上、効力が発生する事項は、以下のように限定されています。

 

1 相続についての事項

(1)相続分の指定・指定の委託(民法902①)

法律で決まっている相続分(法定相続分)を変更することができます。例えば、「長男に遺産をすべて相続させる」などの指定ができます(ただし、遺留分の問題等が発生しうることになります。)。

 

(2)特別受益者の持ち戻し免除(民法903③)

すでに、贈与や遺贈を受けている共同相続人がいる場合、民法では、共同相続人間の公平を図ることを目的として、贈与分や遺贈分を相続財産に戻し(持ち戻しといいます。)、各相続人の相続分を計算することとしています。しかし、遺言により、この持ち戻しをしなくてよいとすることができます。

 

(3)遺産分割方法の指定または委託(民法908)

例えば、不動産は長男、株式は二男、預金は三男、というように、具体的な分割方法を指定することができます。

 

(4)遺産分割の禁止(民法908)

相続開始のときから5年を超えない範囲で、遺産分割を禁止することができます。この間、相続人全員が合意しても分割することはできませんし、家庭裁判所に対する遺産分割請求もできません。

 

(5)相続人相互の担保責任(民法914)

相続人が遺産分割の結果、取得した遺産に問題(損失)があったときに、別の相続人は、相続分に応じて、その損失を担保しなければなりませんが(民法911)、その担保責任の有無及び内容を指定することができます。

 

(6)遺留分減殺方法の指定(民法1034但書)

遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺(遺産に戻すこと)することとされていますが、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従うこととなります。

 

 

(7)遺言執行者の指定または委託(民法1006)

遺言書の内容を実現するために、遺言書を執行する人(「遺言執行者」といいます。)を指定または指定委託することができます。

 

(8)相続人の廃除及び廃除の取り消しの請求(民法893、894②)

廃除とは、相続人としての資格を失わせることをいいます(廃除の取り消しは、相続人の資格を回復させることをいうことになりますね。)。

重大な効果をもたらすものですから、効力を発生させるためには、家庭裁判所の審判が必要とされています。

 

2 遺産分配についての事項

(1)遺贈(民法964)

遺言によって、遺産の全部または一部を処分する行為のことです。遺贈は、死亡後の遺産処分ですので、いわゆる「単独行為」で遺産の処分をすることとなります。

 

(2)財団法への財産拠出(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律157)

財団法人への財産の拠出(いわゆる「寄付行為」)を遺言で行うことができます。

民法の旧41条2項に規定されていましたが、削除され、別途「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」において規定されることとなりました。

(条文を見ようと思って民法41条の箇所を参照したら、削除されていて、ちょっとびっくりしたのは内緒です。)

 

(3)生命保険の受取人の変更(保険法44条)

 

(4)信託の設定(信託法3条2号)

 

3 身分関係についての事項

(1)認知(民781②)

婚姻外で生まれた子を、自分の子であると認める行為です。法律上の親子関係を発生させることとなります(相続人とすることができる、という効果が生じます。)。なお、認知は、生前でもできることはいうまでもありません。

 

(2)未成年後見人の指定(民法839)、後見監督人の指定(民法848)

親権者が、死後の未成年者の保護を考え、遺言で、後見人やその監督人の指定を行うことができます。もっとも、父母共同親権のときにおいて片方の親が亡くなった場合、例えば、父母のうち父親だけ死亡したときは、母親が親権を行えばよいわけですから、未成年後見人等の指定をすることはできません。

 

(3)祭祀承継者の指定(民法897)

遺言で指定がなされていれば、その人が祭祀の承継者となります。

 

おおむね、これらの遺言事項については、法的な効力が生じることとなります(抜け落ちがあったらご指摘ください。)。

 

これ以外の遺言は、法的な効力はなく、訓示や希望を述べるといった程度のものにとどまります。「兄弟仲良く暮らすように」などと遺言書によく書かれていることがありますが、これも、単なる訓示ということになり、子ども達の仲を法的に規定するものではありません。

 

最近では、葬式の方法、例えば「散骨して欲しい」なども、希望を述べたという程度のものであり、その希望に反しても、法的な問題は生じません。

 

もっとも、このような訓示的、希望的規定にとどまるものであっても、亡くなった方の最後の願いであることに違いはありませんので、可能な限りその希望に沿うようにすべきであると思います。

投稿者: 流山法律事務所

top_btn11_sp.png
04-7150-8810 メールでのお問い合わせ
弁護士ブログ よくある質問 解決事例 流山法律事務所 離婚・男女問題相談サイト