2015.01.31更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

求人情報誌などを見ていると、「住み込み可」や「社員寮あり」といった記載を時々見かけます。社員寮に入寮できるというのは、嬉しい情報なのではないでしょうか。

 

しかし、社員寮に入寮後、トラブルで会社から解雇されてしまった場合、社員寮からすぐに出ていかなければならないのでしょうか。

 

「社員」寮ですから、普通に考えれば、社員でなくなった以上、すぐに退去しなければならないようにも思われます。しかし、それでは、住む場所がなくなってしまうため、影響が大きすぎるとも思います。

 

この問題を考えるには、社員寮への入寮が、どのような法律関係に基づいているのかを考える必要があります。この法律関係の判断は、主に社員寮の賃料額によって決められるようです。

昔の判例でも、「…世間並みの家賃相当額を使用料として支払っている等、原審認定のような事実があるときは、その使用関係を賃貸借と判断して妨げない」との判示がなされています。

 

例えば、社員寮の賃料が、タダであるとか、きわめて低い場合には、社員寮への入居は「使用貸借」という法律関係にあると判断されることがあります。使用貸借であるとすれば、会社から解雇された場合には、すぐに会社に社宅を明け渡す必要があると思われます(会社の就業規則や利用規定等に何らかの規定があれば、それに従って処理されることになると思います。)。

 

では、社員寮の賃料が、賃料相場と比較して同じ程度であった場合はどうでしょうか。この場合には、社員寮への入居は「賃貸借」という法律関係にあると判断され得ます。賃貸借関係にあるとすれば、すぐに退去する必要はないものと思います。

 

この場合には、会社側は、退去を求める「正当事由」がなければ、解雇した社員であっても、退去させることはできません(なお、このほかにも必要な手続きがあります。)。

多くの場合、解雇して会社の従業員としての身分を失ったことが、「正当な理由」とされることが多いと思いますが、そのような争いが生じ得るということは、取りも直さず、短期間で退去させることは難しいということになります。

 

従業員側とすれば、社員寮の入寮についての法律関係を検討し、会社側に適切な反論をする等して退去の期限を延ばしてもらい、その間に、すみやかに新居を見つけ転居するという手法が、もっとも負担が少ない対処法となると思います。

投稿者: 流山法律事務所

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