2015.04.19更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

ある人が、何らかの理由で失踪(行方不明)になり、通常7年間、その生死すら明らかでない場合には、その失踪者が死亡したものとみなし、その法律関係を確定させることができます。これを「失踪宣告」といいます。

 

長期間、生死すら分からない訳ですから、どこかで死亡していることも多いかと思いますが、しかし、その反面、確実な死亡を確認した訳でもありませんので、後日、生存が明らかとなる場合もあります。

 

そのような場合は、家庭裁判所に失踪宣告の取消をしてもらうことができます。これにより、失踪者は、自分の権利を回復することができます。

 

もっとも、失踪者のすべての権利が回復されるわけではありません。失踪宣告を受けてから取り消されるまでの間に、「失踪者の生存を知らない」でなされた行為については、失踪宣告の取消があったとしても、何の影響もありません。

 

例えば、失踪宣告がなされると、失踪者が死亡したとされますので、相続が発生します。

失踪者の土地を相続した人が、「失踪者が生きていることを知らないで」、不動産会社にその土地を売却してしまったとした場合、後に失踪者が戻ってきても、土地を取り返すことはできないということになります。

 

この理屈は、相続や売買などの場合だけでなく、身分関係(家族関係)にも妥当します。

 

失踪宣告がなされると、失踪者は死亡したものとされますので、失踪者の配偶者は、独身となり、再婚することができます。

再婚した後になって、失踪者が帰ってきて、失踪宣告の取消をしたとしても、再婚関係には何の影響も与えませんから、再婚関係が有効(つまり、失踪者との婚姻関係は復活しない)ということになります。

 

もっとも、これは、再婚の当事者双方が、「失踪者が生きていることを知らないで」再婚した場合です。いずれか一方でも、失踪者が生きていることを知っていた場合には、失踪宣告の取消によって、失踪者とのもとの婚姻関係が復活してしまうこととなります(いわゆる「重婚」状態になります。)。

その結果、再婚関係が取り消されかねないものとなるなど、非常に複雑で不安定な立場に立たされてしまうこともありえます。

 

このような複雑な関係にならないためにも、失踪者が生存していることを分かっているのであれば、あらかじめ離婚訴訟などで離婚を確定させてから再婚をするべきでしょう。

(「悪意の遺棄」などを離婚原因として、離婚することができる場合が多いと思われます。)

投稿者: 流山法律事務所

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