2015.03.24更新

流山法律事務所の弁護士の川越伸裕です。

 

交通事故の被害を受け、後遺障害が残ってしまったとき、加害者側からは、治療費などのほか、後遺障害慰謝料を支払ってもらうことができます。

この後遺障害慰謝料の額は、後遺障害の程度(1級から14級までに分類されます。)を基礎として、個々の事情を踏まえて決定されることになります。

 

ところで、後遺障害は、事故の直後に発生するものばかりではありません。場合によっては、事故後、何か月も経ってから後遺障害が出ることもあります。

 

しかし、後遺障害が出るまでに何か月も経っていると、その間に、加害者側と示談(和解)が成立してしまっていることがあります。

 

当然、示談成立時には後遺障害がなかったのですから、後遺障害慰謝料の支払がなされている訳もありません。また、多くの示談書には、「債権債務なし」(これ以上の請求はしない)との記載がなされることがほとんどであり、このままでは、被害者側に非常に不利益になってしまいます。

 

では、示談(和解)成立後の慰謝料請求は、まったく認められないこととなってしまうのでしょうか。

 

この問題を考えるに当たっては、発生した後遺障害による損害を、加害者側と被害者側のどちらに負担させるのが公平であるか、という点を考える必要があります。

 

後遺障害は、加害者の行為によって発生したものであり、本来的には加害者がその損害を負担すべきです。また、示談時に後遺障害が出ていなかったとすれば、後遺障害があることを前提とした示談をしなかったことについて、被害者側には何の落ち度もありません。

 

とすれば、示談後であっても、示談当時予想できなかった後遺障害が発生した場合には、加害者側にその損害の賠償を請求することができると解釈するべきでしょう。

 

最高裁の判例でも、示談後に発生した後遺障害について、示談の対象となった損害とは別の損害として、賠償請求を認めている事例もあります。

 

もっとも、新たに発生した後遺障害であれば、どのようなものでも再度の賠償請求が認められると解釈すべきではないでしょう。

例えば、①示談時に予想できなかった新たな後遺障害であり、②医師などの専門家によって、事故と新たに発生した後遺障害との因果関係が明らかとなっていること、③示談によってすでに支払われた金額が、少額であること(実質的に後遺障害慰謝料を含むものといえない程度の額であること)、などの事情があったときに限って認められるべきものと考えます。

投稿者: 流山法律事務所

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